#040 編集動画作成

「編集動画は2種類あるわけだけど、今回は顔出ししないアバターや架空のキャラクターに実況(解説)してもらうやり方を説明します」

「顔出しはダメなんですか?」

「ダメなんて言っていませんが、よほど顔や実績に自信が無い限りはやらない方が良いですね。あと、単純に校則違反ですし」

「「…………」」


 今日の部活は『編集動画の作り方』を解説する事となった。もちろん最初はいつものメンバーだけで済ませるつもりだったが…………ゲーム実況の話が1年を中心に広まり、僕も私もとなったわけだ。


「動画編集と聞くと難しく感じる人もいるかもしれませんが、今はわりと簡単です。もちろん、特殊な映像効果などを使わなければですが」

「やっぱり、そういうのって難しいのですか?」

「難しいのはもちろんですが、ぶっちゃけプロ向けの映像編集ソフトは恐ろしく高いので現実的ではありません。まぁ、無料ソフトもありますが…………本気でソッチ方面に行きたかったら専門学校でしっかり習うのが一番ですね」

「まぁ、そうだよな」


 各種映像・画像編集ソフトは、月額料金制のものと無料のものの二極化(もちろんそれ以外も存在するが)がすすんでいる。昔は月額料金制はなく、高価でも『コレさえ覚えてしまえば……』というものがあったのだが…………その有料ソフトが月額料金制になり、ミドルユーザーが避難する形で無料ソフトも盛り上がってきた。


「プロ向けって、そんなに高いんですか? 学割とか、それこそ親に買ってもらう手もありますよね??」

「やりたい事しだいですが、動画制作なら2~4種類くらいのソフトを覚える必要があって、その使用料が1つごとに大手キャリアのスマホを契約するくらいの料金がかかります。もちろん学割もありますけど、年間5万や10万円が払らえますかって話です。もちろん僕は無理ですけどね」

「「…………」」


 幸い、今は無料ソフトも使いやすくて高性能になってきている。企業を相手にするプロクリエイターを目指すなら扱うソフトも相応でなければならないのだろうが…………個人で動画を投稿するだけなら過剰。できるに越した事は無いが、そもそも動画の面白さの本質はソコではない。


「それでですね、まずは無料ソフトと無料素材を集めるところからスタートします。探し方は簡単で…………適当に好みの動画を開いてみてください。詳細欄に素材サイトのURLが貼ってあります」

「あぁ、そんなところに」

「あったな、そんなの」


 スマホなどのモバイル端末から見ていると詳細をまじまじと見る機会は無いが、パソコンで、それも創作活動にたずさわっているとこういうところが目に付くようになる。


「俺、そういう素材じゃなくて、漫画やアニメの切り抜きを使いたいんだよな」

「わかる! あれ、面白いよな」

「あぁ、気持ちはわかりますが…………それはおススメしません。基本的に訴えられることはないでしょうが、それでも他人の著作物を無許可で乱用する行為なわけですから」


 正直僕もMAD動画や漫画の切り抜きがカットインする演出は好物だ。しかしグレーゾーンな利用法にはリスクも伴う。


「でも! あるるチャンネルとか思いっきりアニメの音源を使いまくってるじゃん。あれはダメなのかよ!?」

「リスクを背負っている自覚を持ち、ある日突然、動画削除やチャンネル削除、それこそ弁護士から内容証明が届いてもかまわないならどうぞ」

「そ、それは……」

「ちなみにクソラノベ紹介って動画が一時期流行ったんですけど、それは権利者の異議申し立て爆撃でほぼ駆逐されましたね。あと、ちょっと違いますけど…………違法な権利主張問題もあります」

「なにそれ??」

「実際には権利者じゃないのに、権利を主張して動画を非公開にさせて…………示談金を払えば早期解決してやるって詐欺というか、たかり行為ですね」

「そんなの逆に訴えたらいいじゃん!」

「じゃあ知らない国の外国人と、弁護士を雇ってバトルしますか? もちろん相手に日本語は通じませんし、そもそも日本の法律も関係ないところに住んでいますけど」

「ぐっ、それは……」


 もちろんサイト側もある程度フォローしてくれるが、サイトも親兄弟では無いので過度な期待はできない。そのさい重要になってくるのが『信頼のおける素材を利用しているか』であり…………海外の有料素材サイトが権利侵害素材を販売していたケースもある。


「難しく考える必要は無いです。よさげな動画をパクリスペクトするだけ。あとは動画編集ソフトに集めた素材を入れて、組み合わせていけば完成です」

「それはそうかもだけど…………じっさいにやってみないとさ」

「残念ながら実演は出来ません。なぜなら……」

「「…………」」


 そう、部室には映像編集ソフトをインストールしている(できる)パソコンがない。


「続きは部のパソコンが買えたらにしましょう」

「いや、あんな赤字のレビューブログで!?」

「そうですね。1年先か、2年先か……。でも、続ければ黒字化はできますし、その経験だって他ではなかなか学べないものですよ?」

「それは、まぁ、たしかにそうだけど……」


 正直に言うと、レビューブログの経営状況は『これでいい』と思っている。下手にバズって甘い考えを植え付けるより、地道な活動で1人1人フォロワーを増やしていく大切さを教えたほうが、よほど皆の為になる…………と思う。




 そんなこんなで僕は、本当に触りの部分だけではあるが、編集動画の作成方法を解説した。

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