#035 ブログ運営

 イラストレーターやストリーマーは儲かるのか? 結論から言えば儲からない。気楽な在宅ワークの個人事業主であるのは確かだが、税金や将来の問題など不安は尽きない。ハッキリ言って、絶対に平々凡々なルートを選んだ方が良い。


 しかしそれでも、世の中にはそんなド安定な道をすすめない者がいる。他者と上手くコミュニケーションがとれない。病気などの理由で規則正しく勤務できない。あるいは富や文化的な生活よりも気ままな生活に魅力を感じてしまう。皆が上手くいくとは限らないが…………ストリーマーなどの職業は、そういった独特の人生や感性を持つ人の受け皿となっている。


「それで、レビューブログはどうなの?」

「まぁ、今のところは思いっきり赤字だね」

「はぁ~、やっぱり100円は払い過ぎなのよ」


 今日も部室で、レビューブログの記事をまとめる。一応、ブロガーなどに興味のある人(1年が中心)数名に手伝って貰っているが、こればかりは地道に実績を積み重ねていくしかない。


「収益からしたらそうだけど、実際の外注はもっとかかるからね」

「なんか、そういう外注でまわす人もいるんでしょ? 動画だと」

「いわゆる"業者"ってやつだね」

「いっそ、アルバイトとしてソレをやるのはどうでしょう?」


 話に絡んでくる部長や師匠。しかし2~3年組は、基本的に他の活動があるのでレビューブログにはかかわっていない。


「それじゃあ本当にアルバイトじゃない。あと、そういう業者って危ないんでしょ?」

「ちゃんとした会社もあるだろうけど、まぁ、個人からピンキリだよね」

「そもそも採用されるほどの腕(編集スキル)が無いからね」

「「ですよね~」」


 手に職があれば世の中何とかなるもので、それに見合って収入も増えていく。だからそういった技術を磨いていくのはいいことだ。たとえストリーマーとして何かできなくとも、その裏方として黙々と作業する選択肢だってあるわけで。


「まぁ、レビューブログにかんしては、そんなに感触は悪くないよ。すでにコメントも付き始めているし。やっぱり、ほぼ毎日ペースで更新できているのは大きいね」

「ほんとうに物量勝負だからね、うちは」


 類似のレビューブログは幾つもあり、後追いのウチがそれを追い越すのは難しい。とくに(プロレベルの特殊な)編集技術や資金面の問題は大きく、そこで勝負したら確実に勝てない。


 それなら何を売りにするのか? それはやはり"人海戦術"だろう。僕が最初にレビュー用紙や、それを記事に起こすうえでのフォーマットを作ったので、あとは僕無しでも回るようになっている。100円という情報提供料も絶妙で、最初こそ雑なレビューが大量に集まったが…………今は用紙の記入の面倒さと、単純に弾数の問題で雑レビュワーの選別は自然とできた。


「やっぱり、毎日投稿、したほうがいいのよね」

「それはまぁ」

「はぁ~~」


 大きなため息をつくのは委員長。委員長は執筆活動を開始しているが、まだ投稿準備中。ストックを作る意味もあるが…………やはり公開するからには良いものを出して、最初から成功したいようだ。


「やりかたはそれぞれあるから、毎日投稿にこだわる必要は無いけど…………まぁ、その方が伸びやすいのは事実だね」

「ミサオ、私になにか手伝えることはありますか!?」

「気持ちは有難いけど、今のところないかな。ほんとうに、考えた事を文字におこすだけだし」


 目をそらしながら答える委員長。じっさい執筆活動はその通りなのだが、それとは別に書いている小説の問題もある。まぁ…………まず間違いなくジャンルはBLだろう。僕も詳しい内容は教えてもらっていないのが、妹さんも含めて、やはり作品もうそうを顔見知りに見られるのは恥ずかしいようだ。


「まぁ、焦る必要は無いから、気楽にいけば良いんじゃない? 学業だってあるんだし」

「「…………」」


 皆が一様に決まりの悪い表情を浮かべる。ゲームもそうだが、創作活動は時間泥棒であり、間違いなく学業が疎かになる。


「つかさ、オタク田、アンタよく両立させているわよね? 絵や小説もそうだけど、パソコンも詳しいし」

「そういえば、たっ君の成績ってどうなの?」

「え? まぁ、真ん中くらいですね」

「これだけ色々やっていて、真ん中なのは凄いわよ。私、小説を書きながら今の順位を維持する自信ないし」

「そこはほら、僕の場合はもとからやっていたことだし。それに、これも要するにフォーマットだよ。最初に無理の無いプランを考えて、あとはそれを守るだけ、みたいな」

「私、そういうの無理。ぜったいダラけて忘れちゃう」


 僕の場合は、ほんとうに二頭追う者の典型例なのであまり参考にはならない。基本的に特別な才能はなく、創作活動そのものが好きなだけなので1つのものに特化もしていない。


「僕も完全に一人だったらそうかもだけど…………投稿していると、ノルマだけはって気になるだけで」

「そういうのあるわよね。私も誰かいると確りしなきゃって気持ちが勝つけど、1人だとついつい……」




 そんなこんなで、今日も雑談に花を咲かせながらもレビューを消化し、本当に徐々にではあるが、閲覧数は着実に増えていた。

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