#034 ミニパソコン
憧れの職業と言えば? 医者や弁護士などの高収入職業は今もなお人気だが、これはどちらかと言えば女性が結婚相手に求める割合が高くなっている。そんな中で増えてきたのが動画を投稿するストリーマーであり、似たようなカテゴライズでイラストレーターや作家なども加わる。
まぁ、この2つは違う部分も多いのだが、どちらも在宅ワークがメインであり、兼業可能。同系のインフルエンサーとして扱われるパターンも増えてきたため、昨今は混同されがちなのだ。
「しかし、改めてみると小さいわよね。これでもパソコンだって言うんだから」
「まぁ、バッテリーやモニターが無いぶん、理論上はノートパソコンよりも小さくできるし…………なんならスティックパソコンっていうのもあるんだよ?」
それはさておき、今日は委員長の家に来ている。目的はもちろん、新しいパソコンの設置。結局パソコンは安価なミニパソコンになったが…………そのぶん周辺機器は(安価なものでああるが)最低限問題の無いものがそろえられた。
「そんなもの、本当に使えるの?」
「もちろんダメダメだよ。でもさ、それをいったらこのミニパソコンだって、昔は全然ダメなカテゴリーだったわけだし」
ミニパソコンもピンキリだが、基本的に名前のとおり小さい。それこそチョコ菓子の箱ていどの大きさで、そのくせ性能は安価なノートパソコン並。映像編集やゲームなどはしない、拡張性も低くて問題無い、性能よりも消費電力や静穏性のほうが気になる。そういったユーザーにはミニパソコンがベストバイとなりえるだろう。
「まぁ、それこそ小説(文章入力)なら、それでもいけるんでしょうね」
「そうだけど、さすがにスティックまでいっちゃうとUSBスロットとか、そっちの方で問題が出ちゃうから」
「あぁ~」
「あっ、あと、モニターアームが余っていたんだけど、使う?」
「なにそれ?」
僕が鞄の中からとりだしたのはシングルタイプ(1画面)のモニターアーム。今はマルチモニター(2画面)にしたので、あまっていたものを持ってきた。
「机とか柱にモニターを固定するための道具だよ。これがあると、机を広く使えるからオススメ」
「それは助かるけど…………お金は」
パソコン用の机を選ぶうえでよくある失敗は、奥行きの浅い省スペースのものを買ってしまうパターンだ。店頭では見ると問題なさそうでも、実際にモニターやキーボードを置くと思ったよりも狭く、マウスの稼働スペースがなくなり、足も延ばせないので体に負担もかかる。
今回はもともと狭いロフトベッドの下の空間に設置するので、よけいに恩恵を受けやすい。
「べつに、使わないから捨てようと思っていたものだし」
「ダメよ。親しき仲にも…………いや、親しいかは別にして、すでにオタク田には迷惑かけっぱなしなわけだし」
ちなみに今日は、ウイお姉さんは不在。むしろ居ないから、今日、この時間になったのだろう。委員長にとって家庭の事情は"秘密事項"であり、妹さんも家に招待した事は無いようだ。
「そもそも高いものじゃ…………って、まぁ、たしかにタダでホイホイ渡すのはダメだよね。僕もそう思うし、言われていたんだった」
僕もそこまで金持ちではないし、ただのクラスメイトに貢ぐほどお人よしでもない。ないのだが…………委員長とは最近いろいろあって、もう、なんだか他人って気がしなくなっている。
「お金は、その…………なにか他に、お願いとかある? まぁ、私が協力できることなんて無いと思うけど」
「そんな事は、ない…………と、思うけど……」
「サイテー」
「いや、そんなつもりは!」
悩んでいると、無意識に視線がお姉さんのエリアに向いてしまった。完全に『エッチな想像をした』と思われただろう。
「その、姉さんはやめておきなさい。性格もそうだけど…………その、アンタだけを見てくれるような人じゃないから」
「それは、まぁ、そうなのかもだけど……。って! だからそんなつもりで見たわけじゃ」
「そう。まぁ、今日はそういう事にしておいてあげるわ」
いや、エッチなお願いに興味が無いわけでも無いんだけど…………それをクラスメイトに頼むほどバカじゃない。そういう意味では、後腐れなくこっそり卒業させてくれそうなお姉さんは、女神かサキュバスかって話だ。
「えっと、モニターアームは本当に安いものだからいいんだけど…………もろもろのお礼がしたいって話なら、部の活動に協力してほしいかな? もちろん今も協力して貰っているけど、ほら、他の部や先生との口利きは、委員長がいてくれてこそって部分も大きいし」
「まぁ、神楽ちゃんのこともあるし、それくらいは別に……。というか私! 言うほどお堅いわけじゃないからね?」
「それは、まぁ」
考えてみればレビューブログの事も委員長は容認してくれている。あれは(100円とは言え)学生間でお金のやり取りが発生しているので、(そもそも許可なんてとっていないけど)学校的にはアウトにしたいはずだ。
備え付けのパソコンもそうだが、基本的に学校は事なかれ主義で、問題が起きそうなことは問答無用で反対される。そこに合理性や、真剣に取り組む保証があっても…………そもそも学校側には許可する利点がないのだ。
「まぁ、お礼は考えておくから。それこそ…………私の書いた小説がヒットしたら~、アシスタントとしてコキ使ってあげてもいいわよ!」
「それ、お礼になってないんじゃ?」
そんなこんなでパソコンの設置作業も終わり、この日から委員長の執筆活動は本格始動となった。
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