第4話 浮気はしてませんよ!?

//SE ドアをたたく音


「せんぱーい! せーんーぱーいー!」//酔っ払った声で


//SE ドアを開ける音


「せんぱーい! たらいまぁー」


「ええー、よってませんよー。ほんとですよぉー。ちょっとー、のんだだけですからー」


//SE 廊下を歩く足音


「きょうはねー、けんきゅーしつのー、のみかいだったんですー。にじかいにもー、いったんですー。だからー、わたしのあぱーとよりー、せんぱいのへやのほうがー、ちかいからー、きゅうにきちゃってー、すみませんねー」


//SE 荷物を置く音


「ええー、だからー、よってないですってばー」


//背後から抱きつく


「せんぱーい? なにしてるんですかー? げーむのー、でいりーですかー?」//耳もとで話し掛ける


//SE ゲーム機を机に置く音


「あれえー? せんぱいー、おわっちゃったんですかー? もうー、ねちゃうんですかー?」


//SE 押し入れから布団を出す音

//SE 布団を敷く音


「ああー、きがえないといけないですねー。たしかー、よびのぱじゃまー、せんぱいのおしいれにー、ありましたよねー?」


「うんしよ~」


//SE 慌ててトイレへ駆け込む音


「あれえー、せんぱいー、どこいきましたー?」


「といれかなー。わたしー、きがえちゃいますよー」


//SE トイレのドアを開ける音


「せんぱーい。いっしょにー、ねましょうねー?」


「せんぱいはー、ここによこになってくださーい。わたしはー、おとなりでねますからー」


//SE 布団に入る音


「あれえー、せんぱいー、いつものー、ふとんにはいるんですかー?」


「じゃあー、わたしがー、せんぱいのー、ふとんにはいっちゃいますよー?」


//SE 布団に入る音


「せんぱーい、もっとちかくにきてくださいよー。あれえー、なんでー、とおくにいっちゃうんですかー?」


「ええー、さけくさいからきょうはだめえー? だからー、わたしー、よってないですってばー」


「ああー、せんぱいー、むこうむいちゃったー」


「むうー……」//残念そうに


「せんぱい、きょうはなんだかー、つめたくないですかー?」


「もしかしてー、わたしのことー、うたがってますー?」


「のみかいとかいってえー、ほんとはー、うわきしてたとか、おもってるんじゃないですかー?」


「ええー? おもってないー? おもってるでしょー?」


「あんしんしてくださいねー? このまえもいいましたけどー、わたしはー、せんぱいのものですからー」


「でーもー」


//そばにちかづく


「そんなにうたがうならー、わたしのことー、かきだしてもいいんですよー?」//耳もとでささやく


「かきだすってー? もうー、せんぱい、きづいてるでしょー?」


「先輩は、トンボになればいいんです!」//急にどや顔で


「多くのトンボは、メスもオスも、複数の個体と交尾をすることが知られています」//急に真面目に語りだす


「自分の精子を確実にメスへと渡せるよう、オスは交尾の前半に、メスの受精をする袋の中から、他のオスの精子を掻きだす行動が見られるんです」


「カワトンボ類のオスの交尾器を拡大すると、トゲのような形状のものがたくさんついているんです。これが、スプーンのような役割を果たしていて、メスの受精をする袋の中から、他のオスの精子を掻きだすと考えられています。そして掻きだしたあとに、自分の精子を渡すことで、自分の子どもを産ませるように戦略をとっているそうです」


「また、野外で観察していると、二匹のトンボがくっついて飛んでいることがありますよね。あれは、交尾後にオスがメスの頭をつかんで飛んでいるんです。メスが他のオスと交尾をすると、前述のように自分の精子を掻きだされてしまう恐れがあるため、他のオスにとられないよう、つきっきりでガードをしているんですね。この行動は、メスが産卵を済ませるまで続くそうです」//だんだん早口に


「だから、先輩も私の浮気が心配なら、つきっきりでガードするか、もしくは掻きだしてしまうか……」


「ええー?」//また酔っ払い声で


「よってないだろってー? よってますよー! いやいや、よってませんよー!」


「ああー、よって……ない……。よってえー……」//眠そうに


//寝息が聞こえだす


「せんぱいに……かきだ……されてぇ……」//寝言


//SE 布団をかぶせる音

//SE 電気を消す音






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