第3話 私は先輩のものです!

//SE ピンポーン。インターホンの音


「せんぱーい。来ましたよー」


//SE 鍵を開ける音

//SE ドアの開く音


「先輩、おじゃましますね。ご飯は食べました? 私も食べてきましたよ」


//SE ビニール袋の擦れる音


「えっ、なに買ってきたんだって? こ、今回は変な物じゃないですよ!?」


//SE ビニール袋から取り出す音


「じゃじゃーん。ワインを買ってきたんです。今日は二人で乾杯しましょう」


「わ、わかってますよ。先輩、お酒苦手ですよね。でも、ちょっとなら飲めるんでしょ? いっしょに飲みましょうよ」


//SE 部屋へ移動する足音


「まずは、このコルク栓を抜きますね。あれ……、抜けない。先輩、栓抜きありますか?」


「えぇー!? ないんですか? もう、飲めないじゃないですかー」


「むぅ……」//残念そうに


「せっかく、今回の作戦のために用意したのに……」//小声でつぶやく


「は、はい!? な、なんにも言っていませんよ!?」


「仕方ないですね。今日は諦めて、早めに寝ますか」


「先輩、ゲームのデイリーは終わりましたか? まだ終わってないんですか? じゃあ、やっているうちに布団敷きますね」


「うんしょ……」


//SE 押し入れから布団を出す音

//SE 布団を敷く音


「わかってますよ。ちゃんと二人分、敷きますから……」


//SE ゲーム機を机に置く音


「ゲーム終わりました? それじゃあ、いっしょに寝ましょう」


「電気、消しますね」


//SE 電気を消す音

//SE 布団に入る音


「先輩? 今日は、先輩がちょっとこっちに来てくださいよ」


//SE 布団の擦れる音


「もうちょっと」


//SE 布団の擦れる音


「もうちょっと。私の布団まで来てください」


//SE 布団の擦れる音


「ここまでが限界ですか? 仕方ないですね。じゃあ、私がちょっと近寄ります」


「うんしょ、うんしょ」


「ふふ、やっぱり、先輩の近くにいるとあったかくて落ち着きますね」


「ねぇ、先輩? 抱いても、いいですか?」//ささやくように


「……」//温かさを感じるように


「ねぇ、先輩? このまま、私の唇をふさいでください」//ささやくように


「……」//目を閉じて待っている


「ダメ、ですか?」//がっかりするように


「私は、先輩のものですよ。だから、こいつはオレの女だって、ちゃんと見せつけてくださいよ。他の人にられちゃわないように、しっかりと、塞いじゃってくださいよ」


「……」//待っている


「そんなに、そんなに、嫌……ですか……?」//ショックを受けたように


「……っ!?」//びっくりする


「先輩に肩をつかまれると、ドキドキ、します……」


「でも、これで……」


「私たちは、チョウと同じになれますね!」//どや顔で


「先輩、知ってます? チョウの中でも特にアゲハチョウの仲間には、オスが交尾の後、他のオスに取られないよう、メスの交尾口にふたをしてしまうものがいるんです」


「ウスバシロチョウやギフチョウを野外で観察すると、メスの腹部に突き出た物が付いていることがあります。これが、オスが出した分泌物で、『交尾せん』と言われているんです。これはコルク栓のように、なかなか外れません」


「ちなみにですね。交尾口に栓をしたら、産卵ができないと思うでしょう? 安心してください。実は、チョウの仲間は、交尾する出入り口と、産卵をする出入り口が別々になっているんです。ふたつの出入り口があるってことですね。だから、交尾口を塞いでも、産卵が可能となっているんです」//だんだん早口に


「私だって、口をコルク栓のように塞がれても、平気です。だから、先輩……!」


「ふへぇっ!?」


「先輩、なんで手で口を塞ぐんですか!? しゃべれないー!?」//口を塞がれ、こもった声で


「先輩、やめて! 先輩~っ!?」//泣き声で






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