第17話 第3回妻女山の戦い(繁信16才)

空想時代小説 


 宮城県蔵王町に矢附という地区がある。そこに西山という小高い丘があり、その麓に仙台真田氏の屋敷があったといわれている。ただ、真田信繁(幸村)の末裔とは名乗れず、白石城主の片倉の姓を名乗っていた。その真田の名を再興するべく、信繁の孫である繁信が活躍する話である。


 宍戸左衛門たちが妻女山に入って、ひと月がたった。左衛門の仲間がぽつりぽつりとやってきた。中には、妻女山の左衛門を頼っていく者もいれば、広真寺の作男で残る者もいた。中には、おなごもいた。麓では雪がとけ、そろそろ山賊が動きだすころになった。

 ある日の夜分に、左衛門の手下が繁信に文を届け、そのまま立ち去った。その文には、

「2日後の明け方、前川・中川・梁川の3つの村を同時に襲うことになり申した。どの村にも20人ほどの山賊が攻め入ります。我らは新参者ゆえ、先陣で前川の村を襲います。碓氷の面々は赤鉢巻きをしておりますので、手加減をお願いいたす。左衛門」

と書いてあった。それを読んだ繁信は、

「赤鉢巻きか。真田の赤備えじゃな」

と言い残し、早速真田源斎のところへ報告へ行った。真田源斎は、翌日、配下の家臣を集めた。その数50人。村役人もいれれば、山賊どもとほぼ同数になる。百姓姿に化けさせて村々に配置させた。

 翌日の明け方、3つの村で火があがった。火をつけられると火消しに人が割かれる。その間に山賊どもは略奪を行うのだ。ところが、そこには備えがあり、火は村人の手ですぐに消された。村々の蔵には、百姓姿の藩士たちが隠れており、山賊どもと斬り合いになった。意外な村人たちの反撃をくらい、山賊どもは早々に引き揚げていった。

 だが、翌日、真田屋敷で酒盛りをしていた繁信のところに、傷を負った左衛門たちがやってきた。その場にいた藩士たちは、

「山賊の襲来か!」

と、いきりたったが、味方と知るとおだやかになった。

「左衛門殿、どうされた?」

「ばれてしもうた。今回の襲撃が失敗したことで、お頭が新参者のわしらを疑った。そこに、以前わしの手下がすみかを抜け出したのを見ていた者がおった。赤鉢巻きをしていたのも疑われた。そのうちに、仲間がしゃべったぞ。とだまされた一人が赤鉢巻きの意味を話してしまい、斬り合いになった。それで何とか逃げ出してきた」

「そうか、それは難儀なことであったな。まずは、体を休まれよ」

 これでまた、山賊どもの動きがわからなくなった。今度は、いよいよこちらが攻める番だと繁信は心に決めていた。


 

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