第5話 メモリー

俺の名前は北川佐久ではない。

この名は政府が俺にまたあいつに狙われないようにと付けられた偽名だ。

俺は幼少期をある島で過ごした。

母の名は 廷禄 美宇 暖かい目をしていてその外見通りとても優しかった。


父は 廷禄 将大 と言って島一番の漁師だった。


廷禄 清隆 という詩の才能を持つ弟もいた。


そして俺の本当の名は廷禄 学。

この名はまだ俺がまだ12や13の頃の名だ。

俺の脳は成長が著しく6歳で父さんにあった漁法を考えて教えた。

この四人家族で楽しく幸せに暮らしていた。

これからも、そんな何気ない日常を送るつもりだった…

けれど、あの日俺が山に入り罠の確認をしている時に村の方から爆発音が聞こえた。

急いで村に戻るとガスマスクをした奴らが島の人々を大きな船?のような乗り物に積み込まれていた。

子供ながらにも近づいてはいけないという生存本能で木の陰から見守るしかできなかった。

その後奴らはいなくなり、自分の家を確認しに行って言葉を失った。

連れ去られたのは俺の家族も例外ではなかった。

そして、奴らと入れ替わるように政府の役人どもが来て、俺を保護した。

保護されてからは政府が作ったシェルターで生活を強いられた。

俺が何かお願いすると何だって出ていくるが皆、目に光がなくまるで操り人形のようだった。

そのシェルターでは俺とは別の部屋だが他にも沢山の子どもたちがいた。

その頃の俺は悲しみで意思を失い、政府の教育を一年間受け後の2年目からは北川 佐久という名を貰い、政府の犬として政府に不必要な連中を暗殺したり、首相のボディガードをしたりと忙しなく働いた。

他の奴らは暗殺を躊躇っていたが、あの頃の俺は心が無かったから暗殺は辛くも何とも無かった。

付いた異名は「無情神」。

そして、スパイ、窃盗、警察学校の教官、軍の前線兵、何でもござれの仕事振りに恐れを抱いた政府は15になる時にいつ埋め込まれたかも覚えていないGPSを取り俺を開放した。

後から知ったが俺の村を襲った奴らは『ゼルダム』という組織らしい。

開放された事から体がそう設定されていたように心は戻ってきた。

だが、俺の心に残った家族がいない喪失感と人を殺した罪悪感はどうしょうもなく張り付き、その喪失感を埋めるように涙が流れた。

そんな絶望から逃れるために自殺をしようと思い首を釣ろうと考えた時スマホの通知音がなり、見ると人気上昇中のVTuber「門真町 うい」のYouTubeの広告だった。

これもなにかの縁だと思いそいつの動画を見てみた。

そこには何もかもが輝いていて、自分が認めてもらえるように頑張っている少女の姿があった。

その姿には話し方、視聴者を喜ばせるイラスト、コメントに即対応するなど、沢山の創意工夫が見られた。

『ああ、何をやってるんだろう』

こんなに頑張っている子を見たら自殺の決心も解けちまうな…良し!生きてみるか。


それからは何気ない日常にも色がつくようになった。

人生が楽しくなって、どんどんの彼女の魅力にのめり込んだ。

いつしか、俺は『うい』成分を供給しないと生きていけない体にされちまった。

その頃から俺の目標は『ゼルダム』への復讐、『うい』を推し続ける事になった。

だから、俺に生きがいを与えてくれた こいつだけは、こいつだけは、絶対に死なせねぇ。


「は、早く帰れ、後は俺がどうにかする」


「で、でも、そんな手じゃ…」


「俺以外にも沢山の人がお前を待ってる、早く帰って動画作れ!」

こいつの動画と配信がなくちゃ生きていけないからな。


「わ、わかりました、でも救急車くらいは呼ばせて下さい」



それから、あむ の呼んだ救急車に乗せられ病院に運ばれた。


_________________

で、でかい!

病院など来たことがなかったから物凄くデカく見えるな。

も、もしやこれは建物ではなく古代竜インペリアルの進化後か!

ならば俺をここまで運んできたのも罠?


「おい!俺を降ろせ」


『いえ、患者様を降ろすなんてできません、申し訳ありませんがじっとしていてもらえますか?』


この反応!俺をそんなにも拘束したいのだな。

こんな所で死んでたまるか!、まだ見てない『ういちゃん』の動画があるんだぞ!


「くっ、拘束をとれ!」

こ、この拘束、まさかとは思うがテラリストリウムか!

毒は無いが、蛇の中で一番締め付ける力が強く、そして何とも言えない可愛さをしているテラリストリウムが何故人間如きに使役されている?

この人間共、もしや…超級魔導師か!

俺も本気を出さないとだな…


『この少年、力を入れている風に 見えるが、拘束ベルトが壊れないように物凄く弱々しい力しか入れてない!』


『おっ、その制服は東京 国立高校の制服だな!

中二病だけど、やっぱり凄いな!』


「そうだろう、そうだろう、お前らも俺の凄さに気づいたか」

闇オーラを隠していたからしょうがないのか?


『それはそうと、凄い怪我だから取り敢えずレントゲン撮ろうか』


「レントゲン?

ほう、お前らはそんなものまで使役できるのか」

人間にしては上出来だ。


そうして、変な部屋?に運ばれた。


『じゃあじっとしててくださいねぇー』


「わ、わかった」

べ、別に怖がってるわけではないからな?


シュン


「ふぇっ」


『そんなに怯えなくても大丈夫ですよ』


「いや、武者震いだ!」

俺がこんな下級魔物に怯えるなんてあるわけがないだろ!


そうしてレントゲンと対峙した次はまた違う部屋に運ばれた。


そこには老人?がいた


『北川 佐久様ですな?』


「そうだが、そんなことよりお前老人ホームに入ったほうが良いんじゃないか?

顔色が悪いぞ」

まるで死体のような顔付きだ。


『私のことより君の腕の方が凄いんじゃよ』


「はっはっはっ、やっと俺の凄さに気づいたか!」

こいつはなかなか良い目をしているようだな。


『ああ、凄い、君の骨は綺麗に折れているのじゃ。

まるで、剣の達人がスパッと斬ったようなのじゃ!』


「ふっ、当たり前だ、俺に出来ないことはない!」

何だそれ?そんなに綺麗に折れているのか?


『このレントゲン写真から見ると明らかにわざと折ったように見えるのじゃ。

も、もしや…君はトラックを止めた瞬間に他の骨まで衝撃で折れないように自分の筋肉で折ったのか?』


「あ、ああ勿論だ!」

俺にそんな事が出来たのか?

今度治ったらやってみるか。


『ガッチガチに固めてくれ、ガッチガチじゃよ?』


それからあの医者の言っていたように両手をガッチガチに固められ家に帰った。

老人ホームが駄目だったのか?


家の前にはエプロン姿の渡辺。


「お前、家出か?」


「ち、違う、佐久君が怪我したって聞いて…」

俺の怪我を知っているのは相坂だけ、こいつもアウトサイダーなのか?

「お前、相坂とLINE繋いでたか?」


「ご、ごめん、アタシ佐久君の事つけてた」


う、うん、まあキモいな。


「で、でも夜ご飯は作ったから、許して!」


「お前、俺の家にどうやって入った?」

朝、俺は鍵を締めたはずだが…


「それは勿論ピッキ、たまたま開いてたんだよ」


「ピッキってなんだ?

もしや、ピッキングじゃないだろうな?」


「あーもう!そうだよ」


「そうか…お前、なかなか腕が立つようだな」


「そ、そんなことより早く家に入らないか?

ご飯が冷めちゃう」


「それもそうだな」

なんか渡辺に勧められてると思うと入りたくない、なんか裏がありそうだ。


「入らないの?」


「あ、ああ」

まあ、渡辺が何をしてこようとも一発で終わらしてやるがな。


家に入ると、俺の家じゃないかのような清潔さが感じられた。

「これ、全部渡辺がやったのか?」


「ご、ごめん!」


「いや、ありがとな」

何故こいつは謝るのだろうか?

別に良いことしてるなら堂々と生きれば良いものを…


「よ、良かったってそんなことより、ごは、ん!」


か、可愛い…な、なんだ、今の感情は!

もしこの場に堀塚がいたらバカにされていたこと間違いなしだな。

「お、おう」

リビングへ行くと勿論部屋は綺麗になっているが、机の上に置かれたハンバーグから目が離せない。


「私もお腹すいちゃった、早く食べよ?」


は?可愛すぎないか?

いやいや、勘違いだ。

俺はういちゃんを推しているはず…俺がこんな不良変態女になびくはずがない。

「ああって食べれん!」


「す、すまない、じゃあ…あーん」

これは!

こここ恋人がする、ラブラブアピールの一つ『あーん』ではないか!


ハムッ………………………………………


「どうだ?」


「………」


「どうにか答えなさいよ!って涙…そんなに不味かった?」


「う、美味すぎる!こんなの食べたことない!」

他の人と一緒に食べているからだろうか?

まあただ一つ分かるのは渡辺の料理がとてつもないくらい美味しいということだ!


「ホントはここで佐久君にあーんしてもらう予定だけど…」


あーしたい、してやりたかった!

ま、まあ今あーんしなかったということは『ういちゃん』を裏切ってないという証明になる

「すまないな」


「佐久君!

今『すまない』って言った?」


「そうだが?」


「むふふ、一歩前進!」


まったく、何なんだ、女とは良く分からん生き物だな。

「そういえば、お前どこからつけてたんだ?」


「全部だけど…テヘッ」


「テヘッじゃねーよ、ということは あむ の秘密も…」

もし、知っていたらマズイな、どう口封じしようか。


「うん、でも誰にも言うつもりはない、その代わりアタシに毎日 佐久君の弁当を作らせてくれ!」


な、なんというご褒美!

「い、良いのか?こんな美味しい弁当ならいつまでも食べていられる」


「ありがとう、いつまでもって…」


さっきから渡辺の顔が赤くなったり悲しんだり、忙しいな。

まあ、たまにはこんな食卓もあって良いかもな!


一通り食べ終わって俺は風呂に入ることにした。


ん?俺って今腕使えないじゃん。

終わったな


ガラッ


「あっそういえば腕使えないんだったな、アタシが入れてやる」


「い、いや、やっぱり今日は辞めとくよ、今日風呂に入ったら邪神が暴れ出しそうだからな」

それはマズイ!恥ずかしすぎて死ねる。

それにあそこだって最近手入れしてないからジャングルだぞ!


「まあ、大丈夫だ、アタシは弟がいるから慣れてる」


「お前が良くても俺が嫌なんだ!」

あんなのを見られたら死ねる。


「まあまあ佐久君は目隠しすれば気にならないだろ?

それに、どうせ佐久君は腹筋とか全てが筋肉で出来てそうだし、大丈夫っしょ」


そんなところは別に気にしてないんだ、察しろ!


「い、嫌だ!」


「まあまあ、」


は?力が強すぎて体が動かせねぇ、こいつホントに俺が一発で倒した渡辺か?


「ハァハァ、さあ脱ごうか」


「ぎ、ギャーーー――」











_________________

皆様に作品をお届けするのが遅くなり申し訳ありません。


お久しぶりです、今回も読んでいただきありがとうございました。

本当に佐久君の過去で沼ってましたww


投稿遅れといて言える立場ではないと思っているのですが、★、フォロー、❤、コメントお願い致します。











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