第4話

「え?それってどういう……」


ガヤガヤ


僕と胡夏が同時に聞き返そうとした時、他の生徒たちが登校してきた。


「あ、そうだ先生に会いにいかないと。まあとにかくよろしくね!冬佳っ、胡夏っ」


そうして会話は終わった。未凪美は教室から出ていってしまった。


25分後、担任の椿咲良つばきさくらが教室に入ってきた。彼女は新人教師でまだ25歳だという。別に高校生に夢と希望を持った人ではない。その割に生徒を気にかけ、若いが信頼も厚い。


「おはよ~みんな。とりまお知らせ。転入生がいます」

「え~」

「どんな子かな~」

「美人がいいな~」


クラスがざわめく。

同時に軽い頭痛がしてくる。


「御幸さん、いいよ」


ドアが開いて未凪美が入ってくる。

一気にクラスが静まりかえった。全員の視線が未凪美に注がれる。まるで見惚れるように。というか見惚れていた。

未凪美は黒板に美しい字を書くと、はきはきと言った。


「初めまして。今日から転入してきた、御幸未凪美です。仲良くして、とは言いませんがみんなとは良好な関係を築きたいと思ってます。よろしくお願いします」

「え~今日の1限はHRなんで、御幸さんと交流する時間にしたいと思います。まあ朝は以上で。解散」


未凪美の自己紹介に違和感を覚えた。こんなに堅苦しい口調はさっきまでの未凪美からは想像できなかったからだ。


こうしてうちのクラスに御幸未凪美が来た。

転入生の一日目など決まりきっている。未凪美のように容姿が整った人ならなおさらだ。案の定その日、未凪美はクラス中の人たちに質問ぜめにされていた。

当然僕が話しかける暇もなく、気づいたら昼休みになっていた。


いつも通り図書館へ向かう。学校内で一番と言っていいほど静かな場所。いつもと変わらない。


後ろから未凪美がつけてきてること以外は。


「バレてるぞ」

「あちゃ~バレちった」

「分かりやすすぎる。尾行したことないだろ」


まああっても困るんだが。


「いや~ようやく逃げきったよ。転校初日がこんなに大変だなんて」


後ろを振り向きながら未凪美は言った。

クラスメイトからの昼ご飯の誘いを断ってきたのだろう。もしくはただ逃げてきたのか。

それよりも気になっていた事を尋ねる。


「で、どういうことなんだ?」


確かに未凪美の言動が未環と被る事はあった。でもいきなり信じられるほど僕はハッピーではない。それに…


「どうかしましたか?水正君」

「ふざけて、はないよな。今の君は御幸未凪美だな?」

「そうですが」


そういうことか。とりあえず胡夏を呼ぶとするか。スマホを取り出し胡夏に電話をかける。

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