第5話

「珍しいじゃん。冬佳から呼ぶなんて」

「こんにちは。季月さん。水正君とは友達なんですね」

「…やっぱりさ、自己紹介の時から思ってたんだけど。朝と違うよね」


小声で胡夏が聞いてくる。


「ああ。御幸未凪美だからな」

「え?どういうことなの?」


僕は未凪美に言う。


「なあ、変われるのか?」


未凪美は少し驚いた表情を見せたもののすぐに答える。


「うん。さすが冬佳。気づいたんだね」


南海未環で。


「もう変わったのか」

「え?なに?状況が全く分かんないんだけど」


戸惑う胡夏に僕と未凪美が同時に言う。


「つまりこいつ(わたし)は二重人格ってことだ(だよ)」


「は?はぁぁぁぁあ?」


「まあそれが普通の反応だよな」

「驚かない冬佳がおかしいね」

「いや別にちょっとは驚いたけど」

「『ちょっとは』でしょ。普通じゃないよ」

「そうだよ。冬佳やばいよ。きもい」

「おい『きもい』は悪口だろ」

「ふふっ。相変わらず仲いいね。久しぶりだな~。この感じ」


未凪美の言葉忘れかけていた目的をで思い出す。


「そうだ。結局どういうことなんだ?」

「あ、そうだよ。未環、でいいの?」

「さっき冬佳が言ったように私は二重人格だよ。南海未環と御幸未凪美の。まあ言ってしまえば私の意識が御幸未凪美の意識にお邪魔してる状況なんだ。だから私と未凪美の2人がいるってわけ」

「理由は?」

「冬佳分かったの?意味。私の頭には難しいけど。分かっても信じられないし」

「まあなんとなく。とりあえず聞くだけ聞こう」

「理由はね、よくわかんない。私だってびっくりしたもん。とりあえず屋上から飛んで、地面が目の前で、『もうぶつかる』ってなったら未凪美の中だったから」

「まあそうだろうな。で、胡夏は信じれるのか?」

「ん~何とも言えない。確かに口調とかテンションは未環そのものなんだけど...あ、もちろんまた会えて嬉しいよ。すっごく。でもいきなり意識だけがって言われても」

「へへっ、やっぱそうだよね。うん。無理があるよいきなりは」


未凪美は少し悲しげだった。


「そうだな。時間だってたっぷりあるんだから、少しずつ考えていけばいい」


僕がそう言って解散になった。胡夏は教室に戻ったが未凪美は動かない。


「戻らないのか?」

「もともと教室から逃げてきたわけだし」


「...ねえ、冬佳はどう思うの?」

「ん?ああ、そのことか。君が言うならそうなんじゃないか?」

「信じてくれるの?」

「まあそういうことだ。というかなんて呼べばいいんだ?」

「ん~私の時は未環で、未凪美の時は未凪美で」

「そうか。昼ご飯でも食べるか?」

「もちろん!」

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