第3話
翌日
朝起きてリビングへ降りると母の
「おはよう。冬佳」
「ん。今日遅くなる?」
「そうだね。もしかしたら泊まりになるかも」
「そう。分かった」
「ごめんね。いつも」
母は仕事が忙しいと職場近くのホテルに泊まり、家に帰ってこない。これもよくあることだ。一人は慣れてるから大した問題もない。
僕はいつも7時15分ごろには家を出る。今日もそれは変わらない。
ガチャ
ガチャ
ドアを開けると同時に向かいの家のドアも開いた。出てきたのは胡夏だった。
「げっ」
僕は思わず言ってしまった。
「『げっ』ってなによ。そんなに私がいやだった?」
「いや、なんか反射で」
「うわ~。ないわ~。まあいっか、おはよ冬佳」
「うん」
「それだけ?素っ気ないな~」
無視して歩き出す。
胡夏は慌ててついてくる。
「なんで?」
「しょうがないでしょ、私の学校も同じ方向なんだから」
「違う。一人の理由だ」
「気分で。だめ?」
「いや、別にだめではないけど」
「じゃあいいじゃん」
ほっとくか。
通学路にはまだ誰もいない。あと30分もすればうちの生徒で道が混雑するだろう。
そんなどうでもいい事を考えながら学校まで歩く。
「いつもこんなに早い時間なの?」
胡夏が聞いてきた。
けれど返事はしない。
それを肯定の意ととったのか再び尋ねてくる。
「なんで?」
答えなかった。答えようとも思わなかった。
いつの間にか校門に着いた。校門にも誰もいない。8時ごろになると生徒指導の先生と風紀委員の生徒が立っているらしい。見たことはないが。
教室は2階の一番奥。教室の鍵が開いていた。今までこの時間に人がいたことなんてなかった。日直が閉め忘れたんだろう。教室に入る。
一人の少女が踊っていた。
昨日の人だ。
暗かったが直感的に思った。
「あれ、誰かいるね」
胡夏も気づく。
上手い。
ダンスなんて見る機会はないが素人でも分かる。隣で胡夏も同じことを思ってるようだ。胡夏はダンスをやっているのでなおさら思うだろう。
結局3分ほど踊り続けてその少女も僕らに気づいた。
そして顔を真っ赤に染めた。暗くても分かるほどに。
「え、う、あ、み、見てた?」
「すっごいね。ねえ冬佳」
「まあ」
とりあえず同意しておく。実際上手かったし。
「ねえ見ない顔だけど、どこのクラス?」
「その~、今日から転入するの」
「えっ転入生!?よろしくね!私は季月胡夏。こっちの無愛想なのは水正冬佳」
「……え?」
「ん?どうかした?」
「胡夏に冬佳!?」
「あれ?知り合いだっけ?」
「私は未凪美。
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