第1話

キーンコーンカーンコーンキーンコーンカーンコーン

         

12時30分


いつも通り授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。

「やっと終わった~」

「昼飯どうする?」


クラスメイトの声が一気に脳内に入り込んでくる。僕はそんな声をあとに教室から出る。昼休みは図書館で過ごす。これがいつものルーティーンだ。


高1になって今日で1ヶ月。友達と呼べる友達はほとんどいない。まあ元々社交的じゃないから。とはいえ中学まではちゃんとクラスに馴染めていた。別に友達がいなくて困ることも今のところない。


図書館のドアを開ける。いつもと変わらない。静寂が僕を受け入れる。本棚から適当に本を選んでいつもの椅子に座る。本を開く。更なる静寂。僕の中に文字が浮かぶ。集中する。

が、10ページほど読んだところで誰かにつつかれた。


「また一人で本読んでる。たまには教室でご飯食べたら?」


振り向かなくてもわかる。季月胡夏きつきこなつ。僕のクラスメイトで、僕と仲がいい数少ない人だ。

小柄で髪が少し茶色いが地毛らしい。

こいつとは中学時代3年間同じクラス、しかも家が正面にある。その影響もあって中学時代はよく遊んでいた。


「別にいいだろ。君には関係ない」

「はあ。友達、まだいないの?」

「いなくても困ってないし。ってかなんか用?」

「何よその言い方。相変わらず冬佳とうかがぼっちなのを見に来たんですー」

「そう。暇なの?もういいでしょ。教室戻ったら?」

「冷た。せっかく心配してきてあげたのに。それだから友達いないんだよ」

「ハイハイ。読書の邪魔だから、もう戻って」


こうして渋々という感じではあったが胡夏は図書館から出ていった。あいつにはちゃんと友達がいる。僕なんかと話してるよりそっちといるほうがいいだろう。

僕は本に戻ろうとした。


しかし胡夏と入れ違いに入ってきた少女に目がいった。

一言でいえば「綺麗」だった。

小さな顔にぱっちりとした目、さらりとした黒く艶のある髪。

美少女というやつだ。

でもこの顔に見覚えはない。しかも私服だった。ナチュラルすぎて気付かなかった。


は?

私服?ちょっと待て、それはないだろ。

撮影か?でも図書館ここはいつも通り。ってことはそれも違うか。


…まあ放っておこう。どうせ僕には関係ないし。


さて昼ごはんでも食べるか。


と僕は思考を7秒で切り図書館を離れた。


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