第5話

「水を飲ませてやってくれ!」



 そんな声が聞こえる。



 ……私は助かったの?


 ……体が熱い。


 ……冷たい水が顔にかかるけど、飲み込めないよ……。



 ……私、もうだめなんだろうな。




「私がやります!」

 華ちゃんの声が聞こえた気がした。


「文句なら後でいっぱい言ってください! 私はあなたに生きて欲しい」


 口のあたりに柔らかい感触が当たった。

 私の口の中に冷たい水が入り込んでくる。


 華ちゃんが口移しで水をくれてるんだ……。

 ゆっくりと圧力をかけて、しっかりと喉の奥へと水が送り込まれる。


 心地よい。

 体に冷たい水が染み渡る。



 口に含んだ水が無くなると、少し舌先が触れ合う。


 その後優しく手を放すように、そっと離れていく。

 唇を離すときには、飲み残しの水がこぼれないようにと口をすぼめて。


 柔らかい唇の感触が最後まで感じられて。

 それが、少しずつ離れていく。



「生きてください!」


 そんな口伝えの水やりを何度も何度も。


 私は華ちゃんと口づけを交わした。




 ◇




 季節は進み、木々は黄色や赤色に紅葉している。


 あの時の、火傷も直った。

 少しだけ跡が残っちゃったけど。


 華ちゃんの団子屋のおやっさんも無事で。

 そうはいっても、あっちの店は無くなってしまっている。

 新しく軒を立てようと大工の人がトントコ金槌を打っている。



 そのおかげもあって、うちの店は大盛況。

 長蛇の列が出来上がっているのだ。


「あっちの団子屋は残念だったな」


 お客さんは口々にそう言ってくれる。




 それは私に向かってではなく、華ちゃん日向かって。


 白い肌、

 火傷の跡も無い。

 今日も綺麗。


「いらっしゃい」

「今日も可愛いね!」


 華ちゃんは、店が無くなってからこっちの店で働いてくれているのだ。


ひなさん。お団子をそちらのお客さんに」

「はいよ!」


 今、このお店は、私と彼女と二人で働いている。

 二人で看板娘。



 白い着物の華ちゃんと、ピンクの着物の私と。

 ちょうど、お団子みたいで。


 華ちゃんがお客さんにお団子を渡し終わり、店の中に入ろうとすれ違う時に手が触れた。

 そしたら、どちらともなく手を握り合う。


 白とピンク。

 二人で一つのお団子。


 彼女がそっと耳打ちをしてくる。


「今度、ちゃんとしたデートしよ」


 私も華ちゃんに耳打ちして返す。

「毎日がデートみたいなものでしょ」


 そしたら、彼女は優しく微笑んでくれる。



 お団子屋さんは今日も大盛況!

 秋の空は、とても高くて。

 鱗雲うろこぐもが広がっていて。



 今日も忙しくなるぞー!



 終わり。



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 ご拝読ありがとうございました。

 イメージ絵をこちらに用意しております。

 合わせてお楽しみくださいませ。


https://kakuyomu.jp/users/tahoshi/news/16817330659646489736


 ━(* 'ᵕ' )( 'ᵕ' *)━ ‌


 このあと二人は、末永く幸せに暮らしましたとさ。

 めでたし、めでたし!(*´︶`*)ノ


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━(* 'ᵕ' )( 'ᵕ' *)━ ‌団子屋、看板娘! 米太郎 @tahoshi

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