第14話 ハッピーデイズ②【side『私』】
────はー、ユーノたん可愛かったぁ…
二人の最初の出会いを見守った後、テンションが落ち着いてくると共に充足感と、凄まじい不安に襲われた。
────これ、大丈夫かな…
昔にハマったゲームだったから、微妙に記憶が朧気になっている。
それでも強烈に記憶していることが、二つあった。
第一に、全攻略のためにエグい課金を強いられるということ。
第二に、ヒロインに選ばれない攻略対象は絶望が待っている。ということだ。
最初は不安でしかたなかったけど、『私』にできることなんて何もなかった。
歯痒い思いを抱えながら、ただただ二人を見守っているだけの日々。
でも、徐々に『私』の懸念は杞憂でしかなかったんだって、考えるようになっていった。
ユーノとアステリオスは、お互いに支え合いながら毎日懸命に後継者教育に挑んでいて。
時折イタズラをして怒られて、泣いて、笑って。
ゲームでは知らなかった、楽しそうな日常を過ごしていく。
そんな積み重ねを見ているうちに、これはゲームなんかじゃない、現実なんだって、『私』は気付いたのだ。
だからゲームと同じ名前の学園が出てきても、忘れていたマレビトなんて話が出てきても、似て非なる世界だって茶化せるぐらい、余裕があった。
ルートもエンドも決まってないんだって、信じきっていたんだ。
だけど、そんな呑気に構えてられたのも、婚約式の頃までだ。
学園にアステリオスが入学してから、次々にゲームの攻略対象が現れ始めて。最後にヒロイン【篠宮きらら】が登場したのだ。
ゲームじゃない、でも同じように世界が進んでいる。
────これ…、…どうなっちゃうんだろう
不安が突き抜ける。
ヒロインに選ばれなかった攻略対象たちが、どんな運命を辿るか。
『私』は、必死になって記憶を掘り起こした。
オルフェウスは親がギャンブルに狂って没落し、失意のまま王宮を去る。
ゼファは強すぎる魔力の暴走によって大災厄を起こし、幽閉。
アドニスは才のある弟に嫉妬して、剣術大会で故意に弟を殺害して投獄。
イカロスはユーノへの恋慕を魔王につけこまれて、兄を殺して魔王に支配され、ラスボスになる。
アステリオスは…どの運命でも、イカロスによって殺される。ユーノは愛する相手を亡くし、失意にくれて自害するのだ。
きららがイカロスを選んだとしても、マレビトがもたらす奇跡によってイカロスの身体から追い出された魔王が、今度はアステリオスに憑依してしまう。
そして、ラスボスとして討伐される運命が待っている。
唯一全員救われるのは、ハーレムエンドのみだった。
でもそれすら、ユーノの不幸の上で成り立っていたはず。
『私』の最推しカップルは、どうあっても救われない。
ネタバレサイトでその事実を知って、『私』はハーレムエンドをやらずに、ゲームから撤退したのだった。
アステリオスにこのことを伝えたいと思ったけれど、ゲームという概念をどう伝えたら良いのだろうか。
いや、それ以前にアステリオスは『私』の存在を知らない。
会話もできない。
『私』の言葉は、伝わらないのだ。
『私』はまたしても、ただ成り行きを見守ることしかできないでいた。
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