第13話 ハッピーデイズ①【side『私』】
────まぶしっ…い
『私』が最初に感じたのは、真っ白い光が目を焼く感覚だった。
思わず片手を持ち上げようとしたのに、手足がいうことを聞かない。
変わりに、『私』のものより小さな手が眼前に翳された。
紅葉みたいな大きさの、柔らかそうな手。
それから泣き声が聞こえる。
「あらあら、アステリオス様。目が覚めてしまったのですね」
そう言って、まだうら若い上品な女性が『私』の身体を抱き上げてくれた。
────え…?
音がある。
光がある。
声がある。
体温がある。
『私』は久々の感覚に、泣き出した。
手足は自由には動かないけど。何もないより、100倍マシだ。
ひとしきり喜びを噛み締めてから、状況を把握しようと周囲に意識を張り巡らせて、日々を過ごした。
もう二度と、地獄よりも恐ろしい場所に戻るのは嫌だったから、この世界にかじりついてでも生きようと思って、必死だった。
そして分かったことは、『私』が憑依…というか、居候させてもらっている身体の持ち主は、皇子様らしいということだ。
名前はアステリオス。
結構不吉な名前だよね。
基本的にこの身体は『私』の自由にはならなくて、会話もできない。
何度か頭の中でアステリオスに話掛けてみたけど、微妙な反応が1割、無視が9割ぐらいだったから、話せないって考えた方が無難だと思った。
それでも、アステリオスが触れたもの、食べたものは『私』に共有されるから、楽しかった。
大人の『私』に離乳食は結構きつかったけど、美味しく食べてるアステリオスの声を聞いて、周囲の大人の反応を見ていると、幸せな気持ちにもなれた。
食事が徐々に変わっていって。
四足から二足へと成長し。
鏡の前に立つ頃に、ようやく『私』はアステリオスの姿を見ることになる。
────驚きの美形だわ、これ…ヤバいじゃん。将来は傾国美青年だよ、アステリオス
どこまでも透き通るような蒼い瞳。絹を思わせる肌。
鼻も唇もまだ成長過程だけど、完璧な位置にある。
髪は金糸みたいにさらさらと輝いて、光に透けるみたいだった。
そんな彼の元に、今日婚約者が来るというのだ。
心に住み着く保護者として、見極めてやらねばなるまい。と思った。
そして、そこに現れたユーノ・アルカソックの姿を見た瞬間、『私』は気付いてしまった。
────めちゃくちゃ萌え、マジ可愛い、推せる
って事実と。
アステリオスとユーノは私が前にやっていたゲーム、『恋スタ』の最推しカップルだってことに。
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