第55話 背中の傷跡

 吸血鬼アルカードが犯罪ギルドウロボロスの幹部を全員殺し、その後ウロボロスの全てを牛耳ったという噂は瞬く間に広がった。

 あの高慢ちきで嫌味な野郎は認めたくはないが、元々実力者だったらしい。その上自分の組織を手に入れたとなるとまた厄介になる。


 とりあえず新しく買った奴隷であるメリルを連れて家に帰る。


「クレドさん、お帰りなさ……あれ、その人は」

 

「新しい奴隷のメリルだ」


「え……」


 エリーシェがショックを受けたような表情をする。


「まあ、仲良くしてやってくれ」


 そう言って俺はメリルを連れて中に入る。彼女のためにも部屋を用意しなければならない。



 夕食の支度が終わり、メリルを食堂に案内する。皆が食卓に着くと、俺は言った。


「みんな、よく聞いてくれ。新しい奴隷のメリルだ。今日から彼女がここに住むことになる。よろしく頼む」


 メリルは一言も発さず俯いている。


 エリーシェも元気がなさそうだし、リンはきょとんとした目で新しい同居人を見ている。


 夕食時は皆、無言。とても気まずい。



「ご主人様、濫りに奴隷を増やすのはどうかと思います」


 夕食後、リンが意見してきた。


「どうしてだ?」


「私も、エリーシェも、悲しんでいます。ご主人様に飽きられたのではないかと」


「そんなことはないよ。みんなで仲良くやってくれ」


「……わかりました」


 完全に納得したとは思えないが、リンは引き下がって行った。メリルが来たからといって、二人にも構うし、問題はないだろう。


 夜、俺はメリルの寝室に入っていく。


「起きているか?」


「はい」


 相変わらず口数の少ない彼女は人形のようにベッドの上に佇んでいる。何を考えているのか全く分からない。


「いい加減に、心を開いてくれないか。お前のことを知りたい」


「覚悟はできています。買われた奴隷がどうなるのか、想像もついています」


「いや、そういう目的でお前を買ったんじゃない」


「じゃあどうして買ったの? 私の体の傷が気になったから?」


 彼女の背中には大量の傷の跡があった。それは鞭のようなもので叩かれた跡だろう。


「そうだな……それもある。奴隷商にやられたのか?」


「違うわ」


 唇を噛んで前髪で顔を隠すメリルは辛い記憶を思い起こしているようだ。


 そこから、彼女の壮絶な過去が語られた。

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黒の魔銃使い~若返り転生!元無職は裏切った仲間に復讐し奴隷ハーレムを作る~ 月読れいん @xeno

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