第50話 屋敷での生活

 ほどなくして俺は高級住宅街の屋敷に引っ越した。庭は広いし、噴水がついている。玄関にはシャンデリアがきらめいていて赤い絨毯が敷かれていた。屋敷の中は広く、部屋数も多く、キッチンも浴室もある。


「ここ、ちょっと広すぎないか?」


「私がお掃除するので、大丈夫です!」


 エリーシェが張り切っている。


「私もお手伝いします」


 リンもやる気なのでじゃあ俺も、となる。


 みんなで部屋を掃除したり、必要な物を揃えたりしていたらあっという間に日が暮れた。


 食堂でリンとエリーシェが作ってくれた料理を味わう。俺は料理にスキルを振っていないのであれだが、二人の作ってくれたものはレストランに出てきてもおかしくないほどだった。素材の味を活かし切っている。


「この海岸エビのトマトクリーム煮、おいしいですよ」


「こっちのメロウ兎肉のスパイス香草焼きも美味です」


 俺は農場の醸造ワインを味わいながら料理を口にする。どれも舌がとろけるほどにうまい。


 豊かな夕食の済んだ後、二人と風呂に入る。


 広い浴槽。三人で入ってもまだ余裕がありそうだ。ザバン、というお湯の音と共に体を湯船に浸からせる。


「気持ちいいですね」


 リンは旅の疲れも溜まっていたろうから、良く休んで欲しいものだ。


「私、クレドさんと一緒に来て、良かったと思います」


「それは、贅沢な暮らしができるから?」


「それもありますけど……」


 エリーシェは何か言いたげにもじもじする。


「みんなでいるのが、楽しいんです」


「それは、俺も一緒だ。ルーナも連れてきたかったくらいだ」


「今度、連れてきましょうね」


「ああ」


 そうして、三人で体を洗い合う。石鹸で二人の体を交互に洗っていると、どちらもくすぐったそうにしていた。



 風呂を上がって寝室に入り、三人でベッドに横になる。


 ふかふかで弾力がある。寝心地が良いダブルベッドだ。


「クレドさんは、リンと私、どっちが好きですか?」


 エリーシェが腕に抱き着きながら尋ねてくる。


「え? いや……」


「正直に言ってそれは私も気になっていました」


 リンが俺の腕にかける力が強くなる。痛い痛い。


「いや、どっちかなんて決められないな」


「私は鉱山都市にご主人様と一緒に冒険に行きました。私の方が好かれているはずです」


「それなら私だって、森を一緒に探索したりしました!」


 リンとエリーシェの間で謎のバトルが始まっている。


「どちらか決めてください、クレドさん!」


「早く決めてください」


 俺は眠くなってきたのでゆっくりと目を閉じた。これから、うまくやっていけるかどうか一抹の不安も感じるが。


 でも、俺たちは幸せだった。

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