第42話 対ドラゴン戦

 どうして風の宝珠がこんなところに……?


 四本足のドラゴン。その前足に風の宝珠がきらめいている。


 またもや荒れ狂う暴風。


 ドラゴンが風の宝珠を使って大気を操作している。


 瓦礫が巻き上げられ、視界を塞ぐ。


「私が陽動します。その間に倒す方法を考えてください」


「わかった」


 リンと一緒にあのドラゴンを倒さなければ、ロックスにすらたどり着けない。


 ゴオオオオオオオオオッ!


 土煙の中から咆哮を上げて突進してくるドラゴン。


「くっ……」


 すんでのところで攻撃をかわす。


 散開する俺とリン。


 リンは俊敏な動作で暴れるドラゴンの背を駆け上がると、顔に十の字型に短剣を振るった。


 ガアアアアアアッ!


 またもや咆哮するドラゴン。効いていないわけではなさそうだが、倒し切れそうにない。


 ドラゴンと言ったら空を飛び、火を噴くイメージ。目の前のドラゴンの属性は無属性に見えるが、おそらく風と火に耐性がある。


 あの図体のでかさではディープフリーズでも体の動きを止められず、雷撃は鱗に阻まれる。


 ドラゴンの体に向かって銃を撃ちまくる。頭、首、動体、前足、後ろ足、尻尾。

 特に弱点らしき弱点は見つけられそうにない。頭は若干効いたか、という程度。


 リロードする。ダンデの親父からもらった弾をありがたく使わせてもらう。


 リンがドラゴンの尻尾に跳ね飛ばされ、地面を滑って崖の淵で止まった。


「リン!」


 リンに駆け寄り、体を抱きかかえる。


 煙幕弾!


 爪を振り下ろそうとしてきたドラゴンの顔に思いきり叩き込んでやる。


 相手がうろたえている隙にその場から離れる。


「リン、大丈夫か?」


「まだやれます」


 そう言って彼女は勇敢に短剣を構える。


 しかし、もう限界は近いだろう。


 ソーサリー『チャージ』を発動させる。

 魔力を体に充填させ、『マグナムブラスト』の威力を高めるためだ。


 体中に高密度の魔力が充填していく。


 暴風にリンが跳ね飛ばされ、その小さな体が岩肌にぶち当てられる。


「くっ……」


 リンはドラゴンの追撃を避けながら俺の方へと向かってくる。


「リン! 後ろへ」


 言われた通りに彼女は俺の後ろに隠れる。


 チャージ時間は終わっている。後は、ぶっ放すだけ。


 撃鉄を起こす。次の弾は、決まっている。


 ドラゴンが大口を開ける。


 来たか。ドラゴンブレスの前兆だ。


 炎がドラゴンの口の奥に見えた。ここでブレスを吐かれ、風の宝珠で火を煽られたらひとたまりもない。


 だから、このタイミングしかない。


 充填した魔力を銃に集中させる。竜の口の奥に照準を合わせ、引き金を引く。


『チャージ・マグナムブラスト!』


 徹甲弾が竜の口に向かって高速で発射される。


 申し分ない威力の一撃。竜の口を貫き、咢を破壊する。竜の放出しようとしていた炎は暴発し、爆発を起こす。


 竜の頭は赤い炎に包まれた。


 グオアアアアアアア……。


 ドシン、と巨竜の体が地面に倒れる。


 そして、風の宝珠が力のなくなった爪から零れ落ちた。それをアイテムボックスに回収すると、一息ついた。


 竜を倒し、また、レベルが上がって行く。スキルの熟練度も上がって行く。


「やりましたね、ご主人様」


「リン、大丈夫か?」


 俺はリンに持っていたポーションを飲ませてやる。これで回復すればいいが、しばらくは休んだ方がいいだろう。


 山肌に背中を預け、しばしの休息を取った。


 これからロックスを倒すのだが、その前に鉱山都市に寄って泊まった方が良さそうだ。


 どんな状況になっているかも、気になるところではあるし。

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