第16話 遺跡探索

 砂漠を越えるのはそれなりに手こずった。特にアルカードの先導が酷く、速度を出す割には方向を間違えたりするものだから、置いて行かれそうになった。挙句の果てに遺跡自体を通り越して引きかえしたりもした。

 砂漠遺跡は着いてみるとほとんど原型がなく、地下に向けての入り口以外は瓦礫の山だった。


「お主、どんな武器を使うのだ?」


 砂漠遺跡に着いたところでロックスが聞いてきた。


「…………」


「本当に、戦えるのか? お主、まだアイアン冒険者であろう」


 ロックスの侮蔑するような視線が癇に障った。


『ファイアブラスト!』


 タァン、と銃声が響き、ロックスの背後から忍び寄っていたデザートコブラの頭が吹っ飛んだ。


「ぬおっ!?」


「あんたも、このくらいの敵の察知ができなかったら命を取られるぜ」


 俺は銃をしまうと、遺跡の入り口に向かって足を踏み出す。


「遺跡は第三層まで分かれている。三層にハルピュイアが出現するから、君の出番だよ。それまでは任せておいてくれていいからね」


「ああ、俺も弾の無駄遣いはしたくないしな。ただ、自分の身は自分で守る」


 アルカードと他愛もない会話をしながら遺跡を下っていく。


「やあああああっ!」


 ロックスは出てきたゾンビの頭部を斧で叩き潰す。どうやら雷撃も加わっているようで、ゾンビは黒焦げになって転がる。


「がーっはっは、見たか!」


 力を誇示するような戦い方はいいが、体力に気を使って欲しいものだ。酔いが回っているせいで狙いも良く定まっていない気がする。


 第二層に行くと、巨大なオーガが現れた。


「フハハハハハハハ!」


 アルカードは鋭い爪を使って敵を切り刻んでいる。

 攻撃力は高そうだ。加えて不死なのだからかなりのアドバンテージだろう。


「俺の前で立っていられると思うなよ」


 オーガが倒れると同時にどこかミザリーにアピールする感じで彼は言う。ナルシスト感を感じたのは俺だけだろうか。


「フフッ」


 影使いのジンクはノーモーションで実体化する鋭い影を使ってスケルトンを切り刻んでいる。

 ある意味こいつが一番強いかもしれない。不気味だが。



 第三層を進み、何やら文字が書かれた石板の前にたどり着いた。


「この先には何があるんだ?」


「それがわからんのだ」


 ロックスは息を切らして斧を担ぐ。ちょっと無理してないか、こいつ。


「どうやら重要な何かが隠されているみたいなんだけどね」


 すかした態度でアルカードが言う。


「来たわ。ハルピュイアよ」


 ミザリーが言うと同時に一斉に皆が見る。


 そこには鳥の怪物、ハルピュイアが5体、輪になって飛んでいた。

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