第15話 パーティメンバー

 次の日、予定のギルド集会場へ行ってみた。


 あれ……かなあ?


 それらしき一団が固まって座っているのを目にする。昨日のアルカードとミザリーもそこにいた。


「あの……すいません」


 四人で席についている冒険者たちが俺の方を見る。


「おう、待っておったぞ。座れ座れ!」


 小柄な鎧のドワーフが赤ら顔で俺を座らせる。壮年でガタイがいい。

 こいつが多分、斧使いのロックス。朝から酔っているとはどうしようもない奴だ。


 そんな俺の様子をじっと観察し、何も言わない痩せぎすの男。ねっとりとした黒い長髪。目の下にくまがあり、くすんだ色の黒いローブに身を包んでいる。

 こいつが影使いのジンクか?

 なんか嫌なオーラしかないんだが。


「今日集まってもらったのは他でもないよ、みんな」


 両手を机の上に組んで皆を見渡すアルカード。


「遺跡の攻略についてだ」


 俺の歓迎会、って訳でもなさそうだな。


「鳥の魔物、ハルピュイアが倒せず、そこから先に進めない。それを打開する策が一つ」


 皆が一斉に俺を見る。何だ、そのハルピュイアってのは、俺と何の関係がある。


「彼はクレド。不思議な飛び道具を使う。それは魔法とも違うらしい。だが」


「百発百中らしいわね」


 ミザリーが笑顔で俺に手を振っている。その気さくな様子に悪い気はしない。


「ハルピュイアは動きが速いの。そして魔法防御が高い。弓使いをたくさん連れてくるくらいしか対処法が見当たらなかったんだけど、彼がいれば大丈夫ね」


「待ってくれ、じゃあ俺を呼んだ理由っていうのは」


「砂漠遺跡攻略のために決まっておろう」


 ロックスがぐいっと常温のビールを飲み干す。ギルド集会場が酒場も兼ねているとはいえ、飲み過ぎじゃないか?


「足手まといにならなければ、僕は何でもいいよ」


 こいつ喋れたのか、ってぐらいに無口だったジンクが口を開く。


「じゃあ、行ってくれるね。クレド」


 皆に詰め寄られる。期待に満ちた視線が痛い。


「協力はする。だが、そこへはどうやって行くんだ?」


「地図を用意してる。ここから南に一直線だ」


「砂漠を通るのか」


「リザードに乗っていくつもりだ」


 リザードなら砂漠の気候にも適応できるだろうし速度も出る。ただ、乗ったことがないので不安だ。


「善は急げ、早速行こうではないか」


 ロックスが斧を持って立ち上がる。せっかちだな、と思いつつ俺も席を立つ。


「ギルドカウンターを通さなくていいのか?」


「何を言っておる。これはクエストではない」


 ロックスが髭面でにやりと笑う。


 ――それは、盗掘っていうんじゃないだろうか。



「みんな、装備は整えたな。行くぞ」


 どうやらアルカードが先導をして行くらしい。このパーティのリーダー的存在だろう。

 俺が新参者で、多分一番下っ端だ。皆、ブロンズランクなのに俺だけアイアンアランクの冒険者なのも関係している。


 巨大なトカゲのようなリザードに乗って手綱を握り、出発する。


 ステータス画面のアイテムボックスがあるおかげで整える装備は特にないが、水を多めに用意しておいた。


 門を抜け、草原をリザードで走る。


 アルカード、ミザリー、ロックス、ジンク、俺の順。


 そのハルピュイアと呼ばれる魔物を狩るのが俺のとりあえずの目標か。後は、金になるものでも集められればそれでいい。


 こいつらとも、長い付き合いになるかどうかはわからないし。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る