第14話 パーティ勧誘

 エリーシェはその後、ルーナの家に住み込みで見習いとしてやっている。

 俺はというと、冒険者稼業に精を出していた。


 ビッグベア討伐などの危険な魔物の討伐が主だった。交易都市周辺の安全を守るのが仕事だ。


 その中で、面白いことを発見した。視界の隅にある〇ボタンを押すと、ステータス画面のようなものが現れるのである。まるでゲームだ。アイテムなどもそこに放り込めるし、ギルドカードなしにステータスも割り振れる。

 相手のステータスだって見られるし、他の人にはないチートと言ってもいい。


 俺の冒険は、順調だ。


 だんだんとエリーシェと会う日数も減って行った。それでいいのかどうかはわからない。ただ、彼女が上手くやっているなら何も言うまい。


 疲れた俺は酒場に一杯やりに来ていた。ビールを何杯か飲み、酔いが回ってくる。


「ねえ、あなた、ちょっといい?」


 何だ、俺が声の方向を向くと、えらい別嬪さんがいた。


 黒髪ショートヘアで、紫のローブを着ている。胸には青いペンダントがある。


「仮面のクレド、素顔はそんなに格好良かったのね」


 色っぽく迫ってくる魔法使いのお姉さん。俺は内心ドキドキしながら目を逸らした。


「あなた、ちょっとだけ評判になってるわよ。不思議な武器を使うって」


「それに関しては企業秘密だ」


「クレド、私たちのパーティに入らない?」


 胸の谷間を強調されてそんなことを言われる。


「いや……」


 ここらでパーティに入っておくのもいいか。一人だと攻略しづらいダンジョンとかもありそうだしな。


「いいけどさ。俺は今、一人だから」


 エリーシェのことが頭をよぎるが、振り払う。


「そう? ありがとう。私はミザリー。よろしくね」


 人の良さそうな笑みにまたドキッとしてしまう。しかしなぜだろう、どこか心のこもっていない感じがするのは。


「やあ、勧誘はすんだかい?」


 ミザリーの後ろから現れたのは貴族風のコートを着た男だった。金髪にロン毛、真ん中分けして額を出している。顔は面長で、頬骨が出ているのが目立つ。


「パーティに入ってくれるって言ってたわ」


「そうか。それは素晴らしいね。私たちのパーティに入れるなんて君はすごく幸運だよ。私はアルカード。よろしく頼むよ」


 そう言ってアルカードは右手を差し出す。俺は仕方がないので握手してやる。


「パーティには他に、影使いのジンクと斧使いのロックスもいる。仲良くしようじゃないか」


 まだ仲間がいるのか。俺も合わせて5人のパーティ。うまくやっていけるだろうか。


「ちなみに俺の固有スキルは不死だ。こう見えても吸血鬼でね。並の人間よりは強いのさ。君の固有スキルは何だい?」


 酒のせいで饒舌になっているのか、アルカードはベラベラ喋る。俺はあまり気乗りしないが。


「固有スキルはないって言われたよ」


「固有スキル無し? おいおい、それはそれは」


 アルカードはあからさまに侮蔑するような眼差しを俺に送ってきた。いけ好かない奴だ。


「とりあえず、明日、冒険者ギルドの集会場で待ち合わせにしよう。他の仲間も合わせてね」


「それがいいわ」


「じゃあ、ミザリー、次の店に飲みに行こうか」


「ええ? 私、もっと仮面のクレドさんとお話ししたいわ」


 そう言って熱っぽい目でミザリーは俺を見てくる。


「何で、そんな奴と話すことがあるんだ? 固有スキル無しだぞ」


「いいよ。行ってきて」


 面倒だったので俺は厄介払いする気持ちで言った。


「そう? じゃあ私は行くけど、明日、絶対来てね」


「ああ。冒険者ギルドの集会場だな」


 面倒臭いが、一人での冒険も行き詰っていたところだ。丁度いい。今のレベルは20。足手まといにはならないといいが。


「じゃあ、行こうか、ミザリー」


「そうしましょう、アルカード。あっ……」


 足元がふらついたミザリーをアルカードが支える。


「大丈夫かい?」


「ちょっと酔ってるみたいで……」


「俺がエスコートするよ」


 アルカードとミザリーがいちゃいちゃしている様を横目で見る。


 さっさと行ってくれないかなあ、と俺はウイスキーをロックで飲みながら思った。

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