第12話 スターグラス入手

「クレドさん、この格好は、ちょっと……恥ずかしいです」


「え? ああ、そうだよな」


 森の中であっても、エリーシェのお腹や肩、太ももや白い下着が露出した格好はあまりよろしくない。


「これを着るといい」


 黒コートを脱いでエリーシェに着させてやる。


「ありがとうございます」


「これでスターグラスも採ったし、ルーナのところに戻るか」


「そうですね……」


 せっかくスターグラスを入手したというのに、エリーシェは浮かない顔だ。


「どうしたんだ?」


「えっと……うーん、私、やっぱり足手まといなんじゃないかって」


「そんなことないよ。良くやってくれてる。スターグラスを見つけ出したのだって、エリーシェじゃないか」


「それはそうですけど……」


 エリーシェと一緒に町に帰る。日は落ちかけており、早くしないと門が閉まってしまう。


「この格好で往来を行くのはちょっと……」


「大丈夫だよ。誰も見てない」


 彼女の手を取ってギルド協会前と中心広場を通る。心なしか彼女の頬は上気していた。



「おお、帰って来たか。魔物に喰われたかと思ってたよ」


 冗談にしてはキツイ。それでもルーナは温かい夕飯を作って待っていてくれた。


 エリーシェから黒コートを返してもらい、スターグラスをルーナに渡す。


 仮面を外して机の上に置く。それにしても、この薄気味悪い仮面はいつまでつければいいんだ?


「エリーシェ、何、その恰好。森でレイプでもされたの?」


「いえ、違うんです。これには深い訳がありまして」


 俺たちはカニバルフラワーの一件を説明した。


「あー……、まあ、たまに出るらしいね。でも、倒せない相手じゃなかったでしょ」


 正直、微妙だった。あいつを倒したおかげで今は魔法使いLv10になっている。

 新しいソーサリー:ライトニングボルトとパッシブスキル:MPリジェネレーションを覚えたのは大きい。


 パラメーターは大体、魔力、魔法攻撃力、敏捷に振っている。余裕があったら防御、魔法防御や体力も強化したいところだが、せっかく遠距離戦ができるのだからあまり意味はないだろう。


「じゃあ度胸試しも済んだし、明日からエリーシェはここで働くってことでいいよ」


「はい!」


 エリーシェの嬉しそうな声が聞けて良かった。夕飯も美味しく感じる。


「じゃあ今日は、クレドに襲われないように気を付けてゆっくり休もうね」


「ルーナさんは襲われないんですか!?」


 エリーシェが興味津々に言う。人を魔物みたいに言うな。


「ボクはレズだから、襲われないよ」


「むしろ襲う側じゃねーか」


 エリーシェの貞操が危ない。ここで働かせて良かったのだろうか。


「じゃあ、お風呂入って寝よう。後片付けはボクがやっとくよー」


 その日はそれで終わった。エリーシェにとっては順風満帆な結果になったと思う。



「エリーシェ、溶けた服はさすがに修復できなかったから、こういうのはどう?」


 朝、そう言ってルーナが取り出したのは白いフリルワンピースと鍔広の帽子だった。


「可愛いですね」


「似合うと思ってね。やっぱ下は黒の下着だよね」


「透けませんか?」


「大丈夫だと思うよ?」


 そう言って二人は部屋に引っ込んでしまう。


 俺は朝の卵料理とサラダ、パンとスープを掻き込む。

 この都市は市場で何でも扱っているから、食も割と豊富だ。


「できました。どうですか? 似合いますか?」


 エリーシェのフリルのついたお姫様然とした出で立ちに目を奪われる。ワンピースの生地が薄いので黒い下着が少し透けている。腰元がきゅっと締まって、襟にも袖にもフリルがついていて可愛らしい。


「すごく似合ってるよ」


 ウェーブがかった金髪に白い服はやはり映えるな、と思った。


「じゃあ、二人で、デートに行ってらっしゃい」


「ええ!?」


 デートと言う言葉に頬を赤らめるエリーシェ。単なる外出のことを言っているのだろうが、この町に慣れる分にはいいことだろう。


「い、行ってきます」


 緊張の面持ちでエリーシェは言う。俺はというと少しだるさがあったが、まあ適当に楽しめればいいか、とのんびり構えていた。

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