本編②

あ。

クジラを探してたら、すごい子を見つけちゃったね。


あなたの足元。見て。

オオシャコガイだよ。すご~く大きいね。

世界で一番大きな貝なんだって。すごいよね。

珊瑚礁の隙間にどっしりかまえて、水の中にいるプランクトン達を食べてるんだ。

ちょっぴり怖いけど、大人しい子だから安心してね。


ねぇ、その隣。珊瑚の上にいるあの子。

オレンジの体に、黒い突起。見えるかな?

あれはウミウシ。珊瑚礁に住む、殻のない貝。

あの子はね、ピカチュウウミウシって呼ばれてるの。

そうなの。すっごく可愛いの。


意識を沈めて。

ウミウシに近付いて、よ~く見てみて。

オレンジ色の柔らかそうな体。黒い突起も柔らかくて、波にゆらゆら揺れている。

ゆ~らゆ~ら。

ゆ~らゆ~ら。


揺れて、揺れて。

ゆ~らゆ~ら。


上に意識を向けてみて。

オニイトマキエイの群れがやってきたよ。

マンタって言った方が、わかりやすいかな?


マントみたいなヒレを、大きく広げて。

あなたの頭上を泳いでいく。

悠々と、泳いでいく。


通り過ぎたかと思ったら、くるりとひるがえって、来た道を戻る。

そしてまた、くるりとひるがえって、その繰り返し。

くるり、くるくる。

くるり、くるくる。


水面の光を背景に、踊るように泳ぐマンタ達。

とてもかっこよくて、すごく素敵。


いつまでも見ていたいけど、そろそろクジラ探しに戻ろうか。


あなたはふわりと浮上する。

水面よりすこし下。降り注ぐ光を見ながら、ふわふわ漂う。

ふわふわ。ふわふわ。

ふわふわ。ふわふわ。


(クジラの鳴き声が近付いてくる)


クジラの歌が、近付いてきた。

もしかしたら、クジラも私達を探してくれているのかも。

でも、クジラはまだ現れない。


代わりに現れたのは、ジンベイザメ。

陽の光を遮って、海の中に影を落とす。

ジンベイザメはあなたに覆い被さるようにして、あなたと同じ速度で泳ぐ。

あなたの目の前を、すぅーっと泳ぐ。


ジンベイザメは優しいお魚。

だから、小さいお魚がいっぱい寄り添ってる。

あの小さいお魚はコバンザメ。

まるで親子みたいだね。

仲良しなお魚達を見てると、何だか心がほっこり、あったかくなってくるね。


ジンベイザメは、私たちを案内してくれるみたい。

ジンベイザメに体を任せて、連れて行ってもらおうよ。


ジンベイザメが道案内してくれる。

コバンザメ達が、あなたの体にくっついて、海の中を泳いでいく。


すぃー、すぃーっと、泳いでいく。

泳いでいく。


(5分間、ヒロインの声が途切れる)


(水中を漂う泡の音、そしてクジラの鳴き声が聞こえる)


(クジラの鳴き声が、じわじわと近づいてくる。大きくなる)


(5分後、ヒロインが再び語り始める)


ジンベイザメは、道案内を終えたみたい。あなたから離れていく。

コバンザメも、あなたから離れていく。ジンベイザメと一緒に、遠くへと離れて泳いでいく。


あなたは青い海の中、のんびり、ゆったり漂っている。


クジラの歌、とても近いね。

もしかしたら、クジラは近くにいるのかも。


(頭の後ろから、激しい泡の音が聞こえてくる)

(続いてクジラの高く長い鳴き声)


わぁ…………!

シロナガスクジラだ!


(リスナーの左側を通り抜けるように、クジラの鳴き声が聞こえる)


この星で、一番大きな生き物。

シロナガスクジラ。

あなたの隣にいるよ。

優しい瞳で、あなたを見つめて。

雄大でキレイな歌声を響かせる。


(断続的にクジラの鳴き声が響く。今までで、一番大きな鳴き声)


すごく、神秘的……


クジラは、あなたに興味があるみたい。

あなたを視界に捉えたまま、ゆっくりと、のんびりと浮かんでる。

ゆらり、ゆらゆら。

ゆらり、ゆらゆら。


(クジラの鳴き声。特定のフレーズを、歌のように繰り返す)


クジラの歌、あなたにはどう聞こえる?

心が凪いで、落ち着いてこない?


きっとこの歌は、子守唄。

あなたのための、子守唄。


クジラが、穏やかな目であなたを見つめる。

安心するね。リラックスするね。


意識を手放して。

水に溶けて。

眠りに落ちて、いいんだよ。


海のゆりかごにゆられて。

ゆらゆら。ゆらゆら。

あなたは眠る。


おやすみなさい。いい夢を。



(クジラの鳴き声と、序盤から鳴っていた泡の音がフェードアウトしていく)

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