解除(眠り)

(イルカの鳴き声が聞こえてくる)


……ねえ、聞こえてこない?


イルカがやってきたみたい。

一匹のイルカが、あなたに気付いて、水の中を泳いでくる。


あ、この子。昨日の夢に出てきた子だ。

私のこと、覚えててくれたんだ。嬉しい。


イルカは、あなたとも遊びたいみたい。


(イルカの楽しそうな鳴き声。歌うように、断続的に鳴き続ける)


一緒に泳ごう。さあ、手を繋いで。

私がバタ足するから、あなたは何もしなくて大丈夫。


(くぐもった泡の音)


あなたの右手を、私が引っ張って。

あなたの左手を、イルカが引っ張って。

のんびり泳ぐの。

すい~すい~って。


段々と水面が近づいてくる。

煌めく陽の光が近づいてくる。


(水から顔を出す、ざぱっという音)


(序盤から鳴っていた泡の音が止み、代わりに打ち寄せる波の音が聞こえる)


水面から顔を出す。眩しい光が、あなたの顔に降り注ぐ。

太陽の光、気持ちいいね。

暫く、海を漂っていようか。


ゆらり、ゆらゆら。

体がゆれる。

右に左に。

ゆらゆら。ゆらゆら。

ゆらゆら。ゆらゆら。


海の旅は、おしまい。

楽しかったね。とっても。

今度は、あなたの夢の中へ行ってみたいな。

ねぇ、招待してくれる?


ほんと?いいの?えへへ、嬉しい。


(波の音がフェードアウトしていく)


そろそろ、お部屋に帰ろうか。

海の夢から、あなたのお部屋に。

見慣れた天井、あたたかいお布団。

安心する、いつものお部屋。


今からカウントダウンをするね。

五から数を数え下ろして、ゼロって言ったら、暗示が解ける。

あなたは気持ちよく、眠りに落ちていく。


十、九、八

あなたの意識は、あなたの体の中に戻っていく。


七、六

あなたの両手は軽くなり。


五、四、

あなたの両足も軽くなる。


三、二、

いらない暗示は解けて、あなたの心は、落ち着いていく。


一、

あなたの眠りは、あなただけの、至福の時間。


誰にも邪魔されない、幸せの時間。


ゼロ。


今日は、おやすみ。

素敵な夢、見れるといいね 。

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