後日談6『クリスマス大作戦6』

 






 七海の言葉は、俺の頭の中をグルグルと巡った。


 彼女として見ていない? 七海のことを?






「そんなこと……」




「じゃあ、何で?」




 ―――――!


 それは、決定的な事実だった。


 俺は、七海のことを……正面から見ることができていたか?


 ――――いや、自信を持って頷くことができない。


 それは俺の心の問題、だと思う。




「……ごめん」




「私って、魅力……ない、かな」




「……そんなことっ!」




 七海は、とても可愛い女の子だと思う。


 それは俺自身昔から知っている。


 笑顔が素敵で、彼女を笑わせよう躍起になっていたこともある。




「もしかして、まだ?」




「……!」




 それはまさしく、核心だった。


 遡るは一年前。


 例の一件―――――。


 彼女として付き合うことになったときも、俺は七海に対してどこか負い目を感じていた。




「……俺なんかが、七海のそばにいていいわけがない」




「……」




 それは……。


 紛れもない俺の本心だった。


 七海から「付き合って」と言われた時も意味が分からなかった。


 何で、こんな男と。


 何で……。




「好きだから」




「……?」




「私は、私の意志で佐々木君のことが好きになったの!


 だから、ちゃんと私を見て!!」




 目の前に迫る七海の顔。


 長い睫毛が涙で濡れていて、静かに揺れている。




「余計なこと考えるな!! 


 私を、幸せにすることだけを考えて!!!」




 口を真一文字に結び、俺を真っ直ぐに見据える七海。


 でも……。


 俺は幸せになってはいけない。


 決定的に傷つけてしまった女の子がいる。


 それは紛れもなく目の前の少女に他ならない。




「俺に、幸せを感じる資格なんて……」




「そんなもの、いらないんだよ!!


 誰でも人は幸せになって良いの!!!」






「―――――!」






 不意に。


 熱い何かが、俺の唇と重なる。


 寒い外気の中で、それだけが明確な熱となって、俺の体温と混じり合う。




「……っ」




 目の前の七海は、今にも泣き出しそうな表情をしながら、顔を赤らめていた。




「たくさん傷つけられた人間は、それ以上に幸せにならなきゃいけないんだよ……?」




「……!!」




 俺の貧相な胸の中に収まる―――――七海。














 幸せを、感じてもいいのかな。






 この子と、俺は幸せに―――――。
















「大好きだよ、佐々木君」










「……!!!」






転瞬。








俺の中で、何かが弾けた。






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