後日談4『クリスマス大作戦4』
~12月22日~
雅案 『心も体もポッカポカ!! クリスマスと言えばここっしょ!!!』
平日にも関わらずこうして集まることができているのは、受験生であるが故の恩恵。
俺達三年生は既に自由登校となっており、わざわざ足を運ぶクラスメイトも少なくなっていた。
「あのさ……雅」
「何?」
「その……、生々しいわ……」
俺の言葉に苦笑いをしながら深く頷く太一と阿久津。
俺達が集められたこの
怪しげなピンク色のネオンに彩られ、電飾がキラキラと輝いている。
その上特徴的なのはその西洋の城のような外観。
つまりはそういう
「ここ……
突然の大声に、道行く人が訝しげにこちらを向く。
「だって~、二人の空間だし……。美味しい食べ物もあるし……。ムード良くなったら
「あのさ……、せめて「高校生」という前提は踏まえてくれ……」
俺らのリアクションに、頭に疑問符を浮かべている雅。
確かにお前の「普通」なのかもしれないけどね!?
一童貞にはかなり刺激が強い……。
「あの……舘坂。一応効くけどマジで考えたんだよね?」
「太一っちまで……。そんなに悪かったかな~?」
悪いと言うよりは、雅の常識と俺らの常識が合ってなさ過ぎて……。
なんとリアクションしたものか……。
雅自身、別にふざけているわけじゃないのが一番心苦しい。
「これは……申し訳ないけど」
「……没で!!」
***
阿久津案 『俺……よく分からねぇし……デートとか。多分こんなんじゃね?』
「えぇ……、俺明日だと思ってザックリとしか考えてねぇよ……」
雅案が思わぬ頓挫という形で幕を引いたため、急遽阿久津案へと移行。
俺ら四人は街中へと出て来ていた。
「太一案は……うやむや。雅案は論外……」
考えてくれている三人には申し訳ないが、クリスマスまでいよいよ日がなくなってきた。
さすがに焦らざるを得ない。
と言うか……いよいよ俺の精神状態がヤバい。
「俺の考えてきたデートプランは……あの、別に期待すんなよ? マジで普通だから」
阿久津にしては随分置きに行った物言い。
……別に大喜利じゃないんだけどな。
面白さなんて必要ない。
むしろ参考になるモノでないと困る。
阿久津は雅案であるラブホの後で言いづらいのか、口をモゴモゴと動かしている。
自然と集まる注目。
「あの……飯行った後に、イルミネーション……的な」
「「「おぉ……」」」
普通だ。
いや、その前に阿久津からそんな普通なプランが飛び出すとは意外だった。
一不良の前に、コイツは一馬鹿でもある。
どんな突拍子のない案が飛び出すかと思いきや……。
何なら一番まとも。
「なるほどなぁ……。別に奇をてらう必要もないか」
うんうんと頷いている太一。
最初からこの路線で考えてたほうが無難だったんじゃ……。
「飯って、どこに行くの~?」
「そこはやっぱりクリスマスディナーとか……じゃね?」
となると、そこそこ良い店か……。
今から予約して間に合うかしら。
「ってかさ、七海ちゃんそんな良い店喜ぶかなぁ?」
「……それもそうか。佐々木。どうなんだ?」
「……分からん」
付き合ってからというもの、そんなに二人で出かけたことがない。
外出制限は少しずつ緩くなってはいるものの、そこまで長時間外に出れたことも、そこまでなかったような気がする。
「彼氏だろ? 何で分かんねんだよ」
「いやさ……、七海が喜ばないビジョンが見えないんだよな」
彼女は紛れもなく「良い子」だ。
何だったら太一、雅、阿久津、誰の案でも笑って付いてきてくれそう。
……ラブホはどうか分からないけど。
「「「う~ん」」」
最早当初の企画なんてどこへやら、四人全員で頭を悩ませる事態になってしまった。
と言うか最初からこうして話し合っていれば良かったんじゃ……。
「……七海ちゃん、性格良いからなぁ~」
「これはさ、やっぱり佐々木が考えるから意味があるんじゃね?」
「……俺も何かそんな気がしていた」
別に正解なんて必要ないのかもしれない。
そもそも正解なんて出す必要がないのかも。
「よし、佐々木。木本のことは多分、お前が一番分かっているはず!!」
「そうそう、あとウチ達マジで無能すぎた」
「七海によろしく!!」
「不安しかねぇ……」
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