第25話 塚原陽菜の憂鬱

 



「とりまクラスの裏グル作って、そこで佐々木の情報を共有した、って感じ」


「さすが陽菜ァ。やることはえー」


「お前さ、急ぎすぎんなよ? いっつも速攻で壊すんだからな」


 いつものたまり場の小屋で、最近の動向を蒼汰達に話していた。


 蒼汰は私の本カレ。


 佐々木とかいうゴミとは違う、本当の彼氏。


 吉丘工業を仕切っている裏番みたいなもので、その力一本で頂上まで上り詰めた。


 その地位も権力も魅力的だけど、やっぱが刺激的。


 何て言うか……。


 私には思いつかないようなことを思いつくし、実際にやる。


 例えば。






「…………おい、。お前はどう思う?」






 ――――――女を拉致監禁して、文字通りにする。



 全員の視線の先。


 そこにはズタズタの制服に、体中青あざだらけの一人の女生徒。


「…………」


 うつむいていて表情は分からないけど、まぁ、死なない程度に痛めつけてあるとは思う。


「……何とか言えよっ!!」


「っ……!、うっ、がはっ」


 七海の腹に蹴りが入る。


 鈍い音。


 毎日こうして暴力にさらされていて本当にかわいそう。


 ……まぁ、蒼汰達に紹介したのは私なんだけどね。


 私の中学の同級生で、中2の時に転校してきたのがこの七海だった。


 何かと気に食わないやつだったから、ずっといじめてた。


 でも、全然反応が面白くないんだもん。


 そこで、蒼汰に色々してもらっているってわけ。


 本当に哀れな女。


 私の気に入るような言動をしていればこんなことにはならなかったのに。



「ところで、佐々木ってどんなやつなの?」


「あっ、それ聞いちゃう? マジで冴えない童貞だよ」


 この前のデートの時に隠し撮りした写真を見せる。


「……まじで特徴がねぇ顔」


「美人局でボコるってのはどうよ」


「おっ! それいいじゃん!!」


 いや、いっつもそれ。


 嵌める男と私が一緒にいるときに蒼汰がわざと登場。


 そして、蒼汰を男がリンチにする。


 いつも通りの流れ。


「それじゃ、普段と変わんない。はちょっと社会的に殺してみたくてさ~」


「どうすんだよ」


「とりまLINEかなぁ」


 佐々木のキモいLINEはある程度引き出したから、あとはどう使うか。


「ちょっと陽菜、例のLINE見せてくれよ」


「あれ、まだ見せてなかったっけ」


 スマホを操作し、スクショを蒼汰に見せる。


「うっわ、マジで受けんな笑笑」


 ゲラゲラ笑っている蒼汰。


「ちょっと、お前も見てみろよ。七海。めちゃくちゃ笑えるから」


 光のない七海の目の前にスマホを差し出す蒼汰。


「コイツのLINE、めちゃくちゃ笑えるべ?」


 クスリのせいでろくに目も見えていないと思う。


 でも。


 その時だけは。


 どんなにクスリを打たれても。


 どんなに姦されても。


 反応がなかった七海が――――――。











「…………佐々木……、君?」




 ――――――した。







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