第26話 塚原陽菜の驚愕

 





「佐々木………君……は、私……をたす……け…てくれ……」


 なんだよ、コイツ。


 これまで何も反応しなかったくせに。


 私らには目もくれなかったくせに。


「急にしゃべり始めて気持ちわりぃな!!」


「おい、今だったら反応返ってくるかも!! やるべやるべ!!!」


 ベルトを外し始める男共には目もくれずに、私は考えていた。


 七海は、LINEのを見て反応した。


 顔見知り?


 昔、同じ学校だったとか?


 佐々木なんて名字はどこでもありふれている。


 でも。




『…………佐々木……、君?』




 明らかに


 あの反応。


 ずっと七海のことを見てきたからわかる。


 ずっとアイツの反応を見てきたからわかる。



 どこ?


 どこで佐々木と断定できたの?


 スクショ。


 その中の情報。


 LINEの口調?


 いや、とまでは絶対にいかない。




 だったら………。



「アイコン……?」



 佐々木のLINEのアイコンは、変なぬいぐるみの写真だった。



 七海は、佐々木を知っている――――――?




「ねぇ」


「おう、なんだ? 今めっちゃ気持ちいいとこなんだけど」


「違う、蒼汰じゃない。…………七海」


 今しがた蒼汰達に弄ばれている七海に声をかけた。


「…………」


 またいつものモード。


 無反応。



「佐々木ってさ………、どんな奴なの?」





「正義の味方」



「っ!! ビックリした……。急に喋んじゃねーよ!」


「ゲホっ、ぐふっ……!」


 再度腹部に蹴りを入れられる七海。



 でも。


 これでハッキリした。



 ――――――七海と佐々木は繋がっている。



「そっか…………、佐々木君に……手を出したんだ」


 クスリのせいで意識は朦朧としているはず。


 何でコイツこんなに喋れるの?


 佐々木の存在を認知してから、急に生気を取り戻したみたい。


「ふふふ……かわいそうだね、あなたたち」


「おめぇ、何言ってんだ? 陽菜、ボコっていい?」


「ちょっと待って」



 ツカツカと七海の前へと歩み出る。



「彼は……敵とみなしたものを容赦しない」





「後悔………しなさい。彼は




「…………」



 分かってないな。


 七海。



「私は、塚原陽菜。お前らみたいなゴミを本当は相手にしないの」


「ぐ…………」


 顔面を踏みつけた。


 これはだ。


 もう服従は成功したと思った。


 でも違った。



 七海は、心のどこかで佐々木という幻想を抱いていた。




 ならば。



「蒼汰ー、ぶち犯していいよ」


「おっしゃ! クスリも入れるぞ!!」


「倍で」


「え?」


「いつもの倍でお願い」


「……お前もSだな」


 注射器の中に、ブツは入っている。


 蒼汰はいつも通り、注射痕だらけの七海の首筋に針を差し込み、ゆっくりと液を首へと送り込む。




「~~~~~~!!!?」



 声にならない悲鳴。


 即効性のある薬物だからね。


 普段と倍の量だから、気持ちよさそうだね、七海。


 助けに来てくれるといいね。


 佐々木が。



 ラリっている七海を犯す男たち。


 私はその光景を一瞥し、小屋の外に出た。


 タバコに火をつけ一服。



「…………まぁ、どうせ排除してあげるからね。佐々木」



 佐々木がどんな奴かなんて知らない。


 知りたくもない。


 アイツはただの私の


 おもちゃが反逆するなんて、――――――ありえない。


 バカみたい。


 希望もっちゃって。


 完全にクスリで頭がやられちゃってる。



 何があろうと私の優位は揺るがない。


 あんなクソ童貞にどうせ何もできない。










「…………ぶっつぶしてやる」





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