Episode:11 海の見える露天風呂にて(お風呂/一緒に/ただし彼女の過去を添えて)⑥

//遠くで、波の音


「どうやらここは、望んで海に飲まれた人がまれに不思議な波に流されて来るところみたい」


「今度はあんたの話を教えてよ」


「あんたが会社帰りに『海で溺れてた女の子』を助けたのは聞いたけど……」


「なんで海に行ったのかとか……さ」


「もちろん、言いたくなきゃいいんだけど」


「………」//主人公の話を聞いている間


「………」


「………やっぱり」


「あんたも、あたしと同じように自ら命を断ちに海に来たんだね」


「仕事がつらかったんだ……」


「そんなときに、先に水に入ろうとしてる女の子を見つけて、助けに入ったんだね」


//イサナが湯船から立ち上がって、主人公を抱きしめる


「そっか……がんばったね……」


//主人公、手をまわしてイサナに抱き着く

//イサナ、主人公の頭を撫でる


「うん。よし……よし……」


「あんたもつらいのに、知らない女の子を助けるなんて本当にすごいよ」


「並大抵のことじゃない」


「………」//イサナが溜め息をつく間


「前は冗談めかして言ったんだけど……」


「やっぱりあんたもここで、私と一緒に暮らさない?」


「あんたがいたら毎日がもっと楽しくなると思うんだ……」

//長い沈黙があり、主人公がうなずく


「………えっ」


「本当に!? やったぁ!!」


//イサナ、自分が裸なのも忘れて湯船で主人公に抱き着く


「うれしいよ! これからあんたと一緒にいられるんだ!」


「……ってごめんごめん! ついうっかり抱きついちゃった」


「でもそれくらい嬉しかったってことで♪」


「じゃあ改めて、よろしくね。あたしの『好きピ』♡」

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