Episode:6 海の見える露天風呂にて(お風呂/洗ってあげる)①



「おはよー、よく眠れたみたいじゃん!」


「心なしか顔色もいいみたい」


「『どのくらい寝てたのか』って?」


「そうだなあ、耳かきが終わってから……だいたい3時間くらい?」


「その間に、お風呂も夕飯も準備できたよ」


「……ということでお約束のアレ、行ってみましょー!」


「ご飯にする? お風呂にする? それとも……あ・た・し?」


「……えっ、『お風呂』?」


「無表情で即答しやがって……つまんねー男!」//笑いながら


「まあ気持ちわかるよ」


「海って気持ちいいけど、身体ベタベタして気になっちゃうもんね」


「じゃあ、お風呂案内してあげる」


//引き戸を開ける、ガラガラという音


「どう、あたしん家のお風呂は?」


「見ての通り超広い上に、海が見える露天風呂がついてるんだよ!」


「しかもこの露天風呂、湯船につかるとお風呂と海と一体化してるように見えるんだ」


「視覚的にもめちゃくちゃ癒やされること間違いなし!」


「じゃああたしは、お部屋に戻ってるね」


「時間は気にせず、ゆっくり疲れを取って——」


「……って、急に腕を抑えてどうしたの!? 大丈夫!?」


「『腕が重すぎて上がらない』?」


「あー、それ、もしかしたら現世でいうところの好転反応に近いやつかも」


「さっき海辺で、あんたのこと神通力を使って無理やり快復させたでしょ?」


「だからあんたの身体が、急激な変化にびっくりしてシグナルを出してるんだと思う」


「明日には収まってるはずだけど」


「……これじゃ、自分でお風呂で身体を洗うのも大変だね」


「仕方ないなあ」


「今日だけはあたしが背中を流してあげるよ」


「……なーにヘンな表情してんの?」


「別に身体を洗われることくらいどうってことないでしょ」


「それとも……恥ずかしいわけ?」//からかい口調で


「……ふふっ、だよねー」//主人公の否定を受けて


「それじゃ大人しく、あたしに隅から隅まで洗われな?」


/カポーン、という桶の音

//イサナが、主人公の背中をゴシゴシと優しくこする音


「……どう、痛くない?」


「よかったあ」


「人の背中を洗うのなんて初めてだから、加減が分からなくてさ」


「……にしてもあんた、ゴツくて広い背中してんだね」


「男の子の背中って感じ」


「なんか後ろから抱きつきたくなっちゃう……っていうのは冗談だよ」


「『さっきからつまらない冗談ばっかり』?」


「ふーん、あたしのことそういう風に思ってたんだ」


「なるほどねえ……」//考えこむように


「わかったよ」//にやりと決意して


//イサナが主人公に抱きつく、ガバッという音

//イサナの心臓の音(強め)


「……冗談にしておくのはやめた」//低めの声で


「思った通りに、抱きついてみたよ」//低めの声で


「行間を読めない子には、行動で示してあげないとね」//低めの声で


//イサナの心臓の音(強め)


「……なーんてね!」


「神様に生意気な口を利くやつは……」


「こんな風に、思わぬしっぺ返しが来るから気を付けるんだぞ?」

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