Episode:5 南国のおうちにて(左耳おそうじ)②



「じゃっ、次は左耳ね」


「頭をぐるんってして、あたしに左耳を見せられる?」


「おおっ、よくできました~」


「やるじゃん」


「……別にバカにしてないってば~」//若干バカにしてるトーンで


「些細なことでも褒める、これってすごく大事なことでしょ?」


「現代人、すぐに他人と比較して自己肯定感を低くしがちみたいだからさ」


「……こら! そんなグサッと胸に刺さったような顔しないの」


「さっきみたいにリラックス、リラックス♪」


「難しそう?」


「だったらそうだなあ~」


「目をつむって、深呼吸してみてよ」


「そんで、五感を研ぎ澄ませて」


「あたしの家に流れる音を感じて」


「……準備できた?」


//ヤシの木々が風に揺れる音

//南国の鳥たちの鳴き声


「ここは南国」


「ヤシの木に囲まれた、真っ白な貝殻でできた日当たりのいい家にあたしたちはいる」


「風が吹けば、潮の香りがほんのりとして……」


「耳をすませば、さざ波の音が聞こえる……」


「ここで流れる時間はすべてゆっくり……」


「………」//衣擦れの音(イサナが主人公の腕を撫でる音)


「うん。リラックスできたっぽいね。よかったよかった」


「じゃあ満を持して左耳、いってみましょー」


//梵天で耳を掃除する音


「ところであんた、海が好きなの?」


「さっき、仕事終わりに海を見に行ったって言ってたからさ」


「……ふーん」//主人公が肯定したので、嬉しそうに


「あたしたち、好きなものが一緒なんだね」


「あたしも、海は大好きなんだ」


「もちろん自分が海神だからっていうのもあるけど……」


「単純に、海って全部を包み込んでくれそうじゃない?」


「見てるだけで優しい気持ちになれるっていうか……」


「……ってごめんごめん。自分語りが過ぎたね」


「あれ? もしかしてあんた今寝てた?」


「ふふっ、否定したって無駄だよ」


「あたし、あんたがうとうととしてるところ、ばっちり見てたんだから」


「ふっ……」//仕上げに息を吹きかける音


//ヘラに切り替えて耳を掃除する音


「今日はいろいろあって疲れてるだろうし、このまま寝ちゃえば?」


「あんたがあたしのむちむちの太ももの上で寝てよーと、気にしないから」


「それよか、あんたの耳を掃除する方が大事だし」


「あら、ほんとに寝てんじゃん。しかも今度はガチ寝だ」


「安心してくれたってことなのかな」//以下、優しく嬉しそうに。


「なんか、嬉しいかも……」



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