第6話 ケルトの悩み 【Side ケルト】
俺ことケルトは、イングストと別れてルグラ沼地の探索を行っている。
目標はゴブリンの討伐だ。今の俺の実力ならば大丈夫だろう。所詮ゴブリンはスライムに毛が生えた程度の実力なのだから。
しかし、油断は禁物。群れると厄介だし、弓矢持ちは普通に強い。死ぬと経験値を大幅に持っていかれるので慎重にいかねばなるまい。
俺は久々にメニュー画面から『ステータス』の項目をタップした。
本当は新しいマップに入る前にイングストと情報共有するべきだろうが、していなかった。理由は単純。忘れていたのだ。次からは気を付けようと思う。
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ケルト 鬼族
レベル:4
二つ名:なし
体力:15→30
攻撃力:25→40
守備力:8→23
素早さ:10→25
魔力:3→18
MP:12→27
SP:30→45
スキル:叩き潰し《プレス》、
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長らく見ていなかったのでステータスの伸びはえげつないものになっていたが、相変わらず魔法は発現していなかった。魔法の才能はないのかもしれない。
「『
数分こうして歩いているうちに汗をかいてくる。なにせ蒸し暑いのだ。俺は断然夏よりも冬派だ。寒ければ着こめば何とかなるが、夏は脱げばいいわけじゃない。てか、脱ぎすぎると色々問題になりそうだしな。
それをさっきイングストにしたら、は?って言われたんだよね。あいつは夏の方がいいみたいだ。夏は海があって、女の子のあんな姿やこんな姿を拝めるから~って自慢気に?言ってた。気持ちは分かるが、理由になっているのか?いや、立派な理由か。
「まあ、あいつらしいよな・・・って!おいおいこれはやばいぞ!?」
そんなどうでもいい事を考えていると、目の前にスライムが現れた。否。これはただのスライムではない。それよりも二回りは大きい、ルグラ沼地最強のモンスター『スライムロード』だ。
全長1メートル程だが、スライムにしてはかなり大きい部類に入るだろう。全身が青色で口や鼻がないのはいつも通りだが、纏っているオーラが違う。これは強者のオーラだ。思わず足が二歩ほど下がってしまった。
「逃げるか・・・?いや、こいつを倒したら経験値美味しいよな。よし!やるぞ!」
俺は先程購入した鉄のハンマーを背中からおろし、スライムロードに向けて突き出した。相手も全くひるんでいない。やはり、普通のスライムとは一線を画すようだ。
「こないならこっちから行くぜ?『
大地を強く踏みつけると、踏みつけた足元の周囲に同心円状に揺れが発生しスライムロードの態勢を崩した。
その隙を逃すまいと近づいた俺は『叩き潰し《プレス》』を発動。スライムロードに直撃したが、弾力のあるゼリー状の何かに押し返された。
「並の攻撃じゃあ手も足もでねえか・・・どうする?手詰まりな気もするが」
『叩き潰し《プレス》』が通用しないとなると、ケルトに打てる手はない。撤退するべきだろう。
「きゅい!」
「くっ!」
しかし、そう簡単に逃がしてくれるはずもなくスライムロードはその大きな体で体当たりを行った。ケルトが大きく吹っ飛び、地面に直撃する。
「『
逃げようとしたら逃げることができた隙だったが、ケルトはあえて逃げなかった。それはひとえにイングストのためでもあり、自分のためでもあった。
「あいつはすげえよ・・・『人喰い
この世界でのイングストの成長は凄まじい。強力なスキルや魔法を手に入れることができたのも1つの要因だとは思う。しかし、自分の間合いを完璧に把握して魔法を放つか、杖で薙ぎ払うか、はたまたスキルを使うのか。即座に判断することができる。
俺にはまだそれが出来ていない。いままでは力任せで何とかなっていたが今後はそうとは限らない。実際、今スライムロードには力で勝てない。
ならば自分もイングストのように考えて戦闘を行わなければならない。さもないといつかイングストにはついていけなくなりそうな気がしたから。
イングストはいずれ自分よりももっと強い人とパーティーを組むかもしれない。その時俺はあいつの横に立てるだろうか?一緒に戦えるだろうか?これからも冒険を続けられるだろうか?
そう考えるだけでどれだけ苦しいか。俺はリアルではその整った容姿と、なまじ何でも出来る能力のせいで周囲との距離があった。いつも孤独を感じていた。しかし、ここに来てようやく気の許せる友人が出来たのだ。
ひねくれてて、自分を過少評価して。もっとおしゃれに気を配れば、それなりの顔になるはずなのに、それに気が付かず自分を醜いと蔑んでばかりいる。散々女子に無下に接されてきたのにも関わらず、女の子が大好きな陰キャ。厨二病もこじらせている。
俺はそんなあいつが、イングストが好きだ。一緒に居たいと思う。恋愛的なのではないが友達としてだ。だから、俺はもっと強くならなければならない。いつまでも友としてあいつの傍にいるために。
「お前には俺の糧となってもらうぜ?覚悟しろよ!『叩き潰し《プレス》』!」
俺はスライムロードとの距離を一気に詰めていき、ハンマーを振りかざした。再び、ゼリー状の何かに攻撃が阻まれて跳ね返されてしまった。
「終わりだ!『
俺は跳ね返されたと同時に宙で回転して、足をスライムの中に突っ込んだ。そして『振動バイブレーション』を使用。本来は敵の足止めに使う技だが、スライムの体内で使っているので、その効果は絶大だ。
「きゅいいいいいい!」
しばらく振動を与え続けると、次第にスライムは動かなくなり、息絶えた。
「あっぶねえ・・・・正直賭けだったぜ」
スライムロードが青白い光に包まれて消滅していくのと同時に、レベルアップ音が続けざまに五回鳴った。どうやらレベル9になったらしい。
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ケルト 鬼族
レベル:9
二つ名:なし
体力:30→55
攻撃力:40→65
守備力:23→48
素早さ:25→50
魔力:18→42
MP:27→52
SP:45→70
スキル:圧殺潰し《ギガントプレス》、
魔法:攻撃力上昇Ⅰ
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「おお!新しいスキルに進化したスキル、それに魔法も発現したぞ!!これは運がいい」
スキルも魔法と同じく、進化することで進化前のスキルが使用不可になってしまう。しかし、進化後のスキルの方が断然強いのでさしたる問題はない。
ちなみに、今回のようなバフ系統の魔法には全部で5段階あって『Ⅰ』は最弱である。しかし、ないよりはあった方が断然いいものだ。
「そろそろイングストとも合流するか!あいつ今何してるんだろうなあ?」
ケルトは、数分前のイングストと同じことを考えていた。
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