第4話 所詮草原最強でしょ?

スライム倒して早三十分。俺達のレベルは3になった。




律儀な俺は一応ステータスを確認する事にした。ちなみに、ケルトは確認しないみたいだ。一気に上げてから見たいらしい。まあその気持ちも分からなくはないので何も言わなかった。




「メニューオープン」とつぶやくと、視界の目の前にメニュー画面が現れる。そこから俺は『ステータス』の項目をタップした。




ーーーーー




イングスト 悪魔族




レベル:3


二つ名:なし


体力:15→20


攻撃力:12→17


守備力:12→17


素早さ:17→22


魔力:35→40


MP:25→30


SP:20→25




スキル:魂喰らい《ソウルイート》、早熟


呪文:火炎球ファイアボール




ーーーーー




ステータス以外は特に何も変化はなかった。やはりそうそうスキルや呪文は手に入らないようだ。




「なあイングスト?スライムはもう飽きたし、別の奴狩りたくない?」


「そうだな。俺もそう思ってたところ」




ここ三十分スライムばかりを狩っていたので、そろそろ別の敵とも戦いたいところだ。スライムのレベルはほとんどが1。高くても2だ。それではあまりにも経験値効率が悪すぎる。




今なら公式ホームページで『はじまりの草原(魔王領)最強!』と取り上げられていた『人喰いマンドレーク』の討伐が出来るのではないか?




先程まで道すがらに大量の気色悪い花がいたのでそれが『人喰いマンドレーク』なんだと思う。




「そろそろ『人喰いマンドレーク』に挑んでみないか?」


「だな!いい運動になりそうだぜ」




というわけで俺達は『人喰いマンドレーク』の討伐を行う事にした。来た道をまっすぐ戻っていくと二メートルはある大きな花を見つけた。その花弁には大きな口があり、こちらを飲み込もうと必死になって口を開いている。キモイ。




「『魂喰らい《ソウルイート》』!」




俺は大きな口に飲み込まれないように遠距離からスキルで攻撃した。右手から発せられた紫色の光線がゆっくりと接近していく。




当然花なので回避する事は不可能。見事光線が直撃した。すると、花は動きを止めた。




「あれ?終わった?」


「え?」




しばらくすると花は青白い光と共に宙へと消えていった。おそらく倒せていたのだろう。




するとレベルアップ音が鳴った。レベルアップするといちいちピコンピコンなるものだから正直鬱陶しい。まあそれがRPGの醍醐味といえばそうなるのかもしれないが。




とりあえず今はステータスを確認せずに周囲に大量に生息している『人喰いマンドレーク』の討伐を優先する事にした。




視界に入っているものだけでもざっと5体。俺はさっき1体倒したので、2体は俺が3体はケルトが相手をすることになった。




「覚悟しやがれ花やろー!『叩き潰し《プレス》』!」




ケルトが思いっきり横薙ぎをした木剣が花の茎の部分に直撃し、『人喰いマンドレーク』の一体は息絶えた。その後左手へと走っていき、二体目を再び『叩き潰し《プレス》』で絶命させた。




「お前で最後だ!『叩き潰し《プレス》』!」




大きくジャンプしたケルトが木剣を振りかざし三体目の花に直撃する瞬間、大きく口を開けた花が木剣を飲み込んでしまった。




直後に後ろにジャンプをしたお陰でケルト自身は無傷であるが、木剣がなくなり攻撃手段を失ってしまった。




「おいおい。何でも喰うのかよ。参ったな。おーい!ちょっとこいつを倒してくれー!攻撃手段がなくなっちまった!」




二十メートル程離れた場所で最後の『人喰いマンドレーク』を倒していたイングストにケルトは呼びかけた。




「了解ー!『火炎球ファイアボール』!」




右手を前に突き出したイングストは魔法を使用し、花を焼き殺してしまった。




「おーやるな!流石だ」




ケルトが手を振ってこちらに向かって草原を走ってくる。




(これが女の子だったらなあ。)




女性に散々煮え湯を飲まされていたはずのイングストだったが、流石に人間の本能は欺けない。不思議とそう思ってしまうのだ。




「あ、そういえば新しいスキルが発現してるな」




俺はメニュー画面を開きながらそうつぶやいた。ケルトも気になっている様子だったので共有化をかけて見せてあげた。




ーーーーー




イングスト 悪魔族




レベル:4


二つ名:なし


体力:20→25


攻撃力:17→22


守備力:17→22


素早さ:22→27


魔力:40→45


MP:30→35


SP:25→30




スキル:魂喰らい《ソウルイート》、早熟、マップ解放


魔法:火炎球ファイアボール暗黒弾ブラッディボール




ーーーーー




「魔法も新しいの発現してるじゃねえか。いいね!」


「ありがとう。多分これであれが使えるようになるんじゃないか?」




そう言って俺はステータス画面からマップ詳細画面へと切り替えた。再び共有化をかけてケルトにも見れるようにする。




ーーーーー




【はじまりの草原(魔王領)】


・出現モンスター


・マップ表示


・詳細




ーーーーー




始めの頃は選択できなかった『マップ表示』が可能になっている。これでこれからのフィールド攻略も捗りそうだ。




ちなみに、ゲームの世界での一日の感覚が現実世界の一時間と言われている。正確に言えばもう少し短いらしいのだがそれでも凄い技術だ。




一日経ってると思ったら、実際は一時間だった。なんてことだからな。時間加速システムは本当に素晴らしい。




ともかくケルトの武器が壊れたので一旦アルグスの町へと戻ることにした。それぞれ魔物から拾った素材をお金に変換して、対応している武器を購入しようというわけだ。




「俺はこれにしようかな」




町のほぼ中心部にある武器や防具がいたるところに飾り付けられ、いかにも武器屋って内装と外装をしている店で俺達は買い物を済ませた。




ケルトは鉄のハンマーを購入していた。ハンマーの値段が高く、防具は買えなかったらしい。次に俺は『魔法使いの杖』なるものを購入した。こちらは『みならい魔法使いの杖』の上位の杖らしくお値段もなかなかだ。ちなみに防具は買えなかった。お金がない。




「ありがとうございましたー!」




可愛い受付のNPCがこちらに向かってお辞儀をした。ちなみに鬼族だ。NPCの種族まで魔族にするとは結構凝っているゲームだと感心してしまった。




「はじまりの草原最強も倒しちまったし、次のマップに挑戦してみるか?」


「そうだな。そうしようか」




かくして俺達レベル4コンビは次なるマップ【ルグラ沼地】へと向かうのであった。

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