第8話

「そらさん。リーダー明後日までに決めたいんだけど、どうする?」



「あー…」


すっかり忘れていた。

思わず苦い反応をこぼす。


「まあやりたくなければ無理してやらなくていいよ。俺こういうの好きだから。」


「ごめんね。もしかしたら僕にはできないかも。」


僕がするより透くんがやったほうがいい。

僕がやってしまうと文化祭は失敗してしまう。



そんな謙遜は建前で本音はでしゃばりだと思われたくない、ということには目を逸らした。

透くんの優しさに甘えてしまおう。そう思った。


「そっか。分かった。こっちも無理言ってごめんね。じゃあ僕がする方向で色々準備するね。」


「ありがとう。」









「おい、お前大丈夫か。学級委員もやって文化祭の実行委員もやってさらにクラスの展示のリーダーなんて。体壊すぞ。」


「大丈夫だよ。好きでやってることだから。」


ドアの前でのしょうくんと透くんの話し声が聞こえる。

わざとじゃない、聞こえた僕がいけなかった。




心臓の音が鳴り止まなかった。


「やっぱり僕が嫌でもやればよかったかな…。」

その言葉は誰にも届くことなく教室の雑音の1つとして消えていった。



僕のせいで大変な思いをする人がいる。


その後悔をする前に言い訳を一生懸命思い浮かべることでしか、自分を守る方法が分からなかった。

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