第17話 時1

 『時』、つまり『時間』って何だろう?

 『時間』は実在するのだろうか?

 『時間』は幻想なのだろうか?


 物理学では様々な検証がなされ、多くの学説が存在するのかもしれない。でも、物理学なんて難しいことは、頭が悪いから解らない。


 誰か、もっと簡単に、解るように説明してくれないかな・・・・・


 50年ぶり位かな、いやもっと長いかもしれないな。突然の同窓会の誘いであった。


 中学時代の仲間たちが、偶然町中で出会い、久しぶりに同窓会を開こうということになったようだ。


 自宅に届いた封筒の裏面に、懐かしい名前が記されていた。そいつが幹事になって、当時の仲間をあちこち探して連絡を取り、今回の同窓会が開かれることとなった。


 封筒を開けると、中学3年生の時の懐かしい名前が並んでいた。ただし残念ながら男ばかりであった。


 なんとか住所や電話番号を調べて連絡をとったのだと思うが、半数以上は名前の前に欠席と記されていた。


 同窓会の当日、会場となる居酒屋の駅に1時間以上前に到着。駅の改札の正面にある喫茶店で時間調整を行うことにした。


 特に楽しみにしていた訳ではないが、昨夜からソワソワしてしまっている。緊張してるわけでもないが、なぜかドキドキしている自分に笑ってしまった。


 会場は駅から5分程度、開始時間の5分前に店の暖簾をくぐる。店員に幹事の名前を言い、個室に案内してもらった。


 話し声が聞こえてくる。聞き覚えのある懐かしい声。


 「オッス」少し気取って声をかけた。


 正面から見つめる顔が、振り向く顔がみんな懐かしい。年は取って変わってはいるが、顔の輪郭や目鼻に、昔の面影がある。


 なんか一気に50年前の中学時代に戻ったような、そんな気がした。


 「おう、久しぶりだな」

 「お互いに、随分歳とったな」


 白髪が目立つ。皺も目立つ。50年も歳月が経てば当然ではあるが。みんな気分はすっかり中学時代に戻り、あの頃の思い出を楽しく語る。


 「どうだい、近況報告でも、ひとりずつ順番に話さないか」


 誰かが、昔話に花を咲かせているみんなに声をかけた。


 「おう、それもいいな」

 「ただし全員揃ってからだな」

 「まだ小林が来ていないんだよ」


 小林か・・・・・思い出した。確かなんか大人しくて影か薄い、目立たないヤツだった。中学生なのに、まるでオジサンみたいに生気が無くて、老けた感じだったな。


 そんなことを思い出していると、我々の部屋の入口に人影が映った。


 「こんばんわ」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る