カメラチェック Inside of outside of outside of

「男女の決定的な認識に違いは、『ギャルゲー』と『乙女ゲー』に代表されると思う」

 背の低い男がそんなことを言い出した。

 フェミニストを喜んで叩けるこの時代に、なんて危ないことを言い放つんだ、こいつ。

「いや、事実の部分だけ口にしている。実態は別にして、男性向けのかわいい女の子が沢山出るゲームが『ギャルゲー』で、女性向けのかっこいい男の子が沢山出るゲームが『乙女ゲー』だ。おかしいと思わないかい?」

 お前の頭がか?

「ギャルゲーと乙女ゲーは、対象者や内容を加味すれば、間違いなく正反対のものだ。しかしギャルゲーの反対語だとボーイズゲー、乙女ゲーの反対語だと男ゲーになるはず。この奇妙な名づけに、きっと差がある」

 なるほどな。確かにおかしな話だ。

「一度ここであるインフルエンサーが言っていたアホな話を披露しよう。ある大学でそこそこかわいい女が男を性行為に誘う、そこそこかっこいい男が女を性行為に誘うという実験をしたらしい。結果、男はバカだからそこそこなホイホイついていき、女は賢いからそこそこな男について行かないと言う結論に至ったらしい」

 男は下半身に脳があるって話題になったな。

「性差にバカだの賢いだの結論付けることこそが愚かな行為だ。そもそも男性と女性の性行為は別物さ。男は体の外の部分を入れる、女は体の中の部分に入れる。リスクが全く違う。君がもし未知の物質を目の前にしたとしよう。それを指で触るのと口に入れるの、どっちの方が抵抗あるかい? まあゴム手袋をして触るのと、ゴムに包んで口に入れる違いと言った方が、実情に合っているのだろうけど」

 女性は自分の体の中に子供ができるしな。

「まあ! 言いたいことは性差は確実にある。そして性差に優劣は無いという事だ。ここで『ギャルゲー』と『乙女ゲー』の話に戻ろう」

 戻るほど進んでなかったぞ。

「『ギャルゲー』というのは主観の話だ。『このゲームには女の子がいっぱい出る!』だからギャルゲー。一方『乙女ゲー』というのは客観の話だ。『このゲームは女の子がやる!』だから乙女ゲー」

 それ深堀しても大丈夫な話か? 『名付けた』か『名付けられた』かって話だろ。

「それほどセンシティブな話でもないさ。女の子は女の子に、かわいいっていう。男の子は男の子に、カッコいいっていえない。そんな話だ」

 言えるだろ。

「心が女の子なんじゃないか? 逆に女の子も『無い筈のモノが起ちそうになった』とか言うだろ?」

 心の中の男女を言い出すと話がややこしくなってくる。相対性理論の話になるじゃねーか。

「ソシャゲでガチャを回す時は、結果が出るまで結果は確定しない。でもコンビニくじを開く時は、くじを選んでレジに持ってきている時点で、結果は既に確定している。理論と現実の話ではあるけれど、たしかに皆理論を現実に当て嵌めたがる」

 おっと?

「ああ、悲鳴が聞こえた。エリカが死んだらしい……6時66分だ」

 毒殺だな。泣かないのか?

「まだエリカの死体を確認してない。確定しなければ結果は違うかもしれない」

 何処に遊びに行ったか写真を提出させたり、GPSで監視したりしなかったのか。

「束縛を愛だと勘違いしているのかい? あれはただの幼児性だよ。お父さんに仕事に行って欲しくないと泣く、6歳児と何も変わらない」

 なら愛は幼児性というだけの話だろう。ホント、バカ。

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