必ず、また

 するとどこからともなく睡蓮の足元に光が集まり出す。睡蓮を中心に広がったのは金色に輝く六芒星の魔法陣。そこから無数の羽根が現れた。巻き起こった風と共に、勢いよくそれは睡蓮の身体をっていく。


「ああ……っ」

「睡蓮!」


 抵抗することも出来ずに只々ただただ漆黒の羽根に覆われる睡蓮を、昂は迷うことなく抱きしめた。だが瞬く間に二人は太秦の生んだ術へと取り込まれてしまう。


はじかれなかったか」


 太秦はそう一人呟き、二人にした同様の術を使って姿を消した。


****


(すごい……千本鳥居みたいです……)


 漆黒の羽根から出来た、果てしなく続く道。その上を跨ぐように、たくさんの鳥居が連なっていた。

 暗い中でも朱色が目に美しいのは、丸く浮かぶ大小だいしょう様々な光のお陰。

 二人はそんな無重力空間を抱き合いながら進んでいく。


 どうやら昂は気を失っているようだ。だがそれでも昂の腕は睡蓮を支えている。睡蓮の頭と腰を自分の身体へと引き寄せ、眠るように目を閉じていた。

 睡蓮の方も瞼が重そうだ。

 その睡蓮の瞳に、石段を駆け上がったコロンの姿が映る。塞がりつつある時空の裂け目から見えたものだった。

 遠吠えを始めたコロンの方も睡蓮たちが見えているのか、その鳴き声はとても伸びやかで、旅立つ二人に声援を送っているかのようであった。


(コロン無事でしたか。良かったです……。階段も、鳥居も元通りになっていますし、きっとこれで安全にお家に帰れま……)


「お! 本当にスポーンしたぞ黒狐こくこ!」

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