第30話 2つの脅威

 湊月はフィラメルのブラウトイフェルを見て苦しみの顔を見せた。そして、奥歯を強くかみ締めながらイガルクを操縦するレバーを強く握りしめる。


 そして、前を向き青い悪魔を見つめた。その悪魔からは星屑のような煌めきが放出されている。


「……なぁ、シェイド。フォースって同じフォースを違う人が2人で持つことが出来るのか?」


「出来るよ。2人にフォースを分け与えればね。その後フォースの源である僕らを殺せば定着もできる」


「なるほどな。じゃあ、リューナとフィラメルの持っているフォースが同じなのにも納得が行くな」


「そうだね。あれ?ていうか気づいてたの?アサシンブレイカーにフォースを付与エンチャントすることが出来るって」


「当たり前だろ。見ればわかる。機体性能を底上げしているからな。だが、あの隣の謎の機体はしてない。そして、このイガルクも出来ない。だったら、フォースかそういう装置か、そのどっちかに絞られるだろ?」


「ふふ、やっぱり湊月は頭がいいね。ご名答だよ。あれはフォースをアサシンブレイカーに付与エンチャントしてね、付与エンチャントするには装置が必要なんだよ。僕達の力を強める装置がね。湊月、君のその仮面に着いているものと同じものが着いているんだよ」


 シェイドはそう言って湊月の仮面を指さした。湊月は仮面を一瞥すると、不敵な笑みを浮かべて前を向く。そして、シェイドに言った。


「何だ?気づいてたのか?」


「当たり前だよ。僕達フォースの源にはフォースを共鳴させることも出来る。湊月のその仮面に僕のフォースが入って行ってるから直ぐに分かったよ」


 シェイドはそう言って腕を組みウンウンと頷く。湊月はその言葉を聞いて少し考えた。しかし、そう長く考える暇は無い。気がつけばもう目の前にフィラメルが居る。


 湊月は何とかフィラメルの攻撃を避け後ろに逃げようとした。しかし、直ぐに嫌な予感がして横に避ける。そして、そのまま攻撃を喰らわないようにフィラメルの背後をとった。すると、その数秒後にさっきまで湊月がいた場所に湊月の剣を持った謎の機体が剣を振り下ろしながら落ちてきた。


「っ!?」


「邪魔をするな!特部!」


「ですが!シャドウは強い!一人でやるより2人でやる方が確実に勝てるはずです!」


「……フン!勝手にしろ!ただ、私の邪魔をするなよ!」


「了解です!」


 二つの機体はそんな会話をして湊月を襲ってきた。その様子からは、さっきまでそんな会話をしていたのかと疑問に思うほど攻撃を合わせてくる。凄まじい程のチームワーク力だ。


 湊月はその二つの機体の力に圧倒されながら何とかその攻撃を全て捌いていく。しかし、その猛攻は凄まじく全てを捌き切ることは出来ない。ましてや、片腕で戦おうなんて愚の骨頂だ。


 湊月はそう思いながらも必死にその攻撃を防いでいく。しかし、何度攻撃を防ごうとも少しずつ削られていく。


 湊月はコックピットの中に鳴り響くアラームを聞きながら操縦レバーを強く握りしめる。そして、残っている片腕で銃を構え地面を撃った。


 すると、地面が突如爆発する。そして、ちょうどその上にいた2つの機体は爆発に巻き込まれてしまった。


「……」


「やるな。まさか、こんなところに地雷が埋まっているとはな。気づかないうちにまた場所を移動させられていたのか」


「よくわかったね。まぁ、それも無駄に終わったけどさ」


 湊月はそう呟いてニヤリと笑った。そして、右手をレバーから離し隣に置いてある仮面に触れる。


「湊月!それはダメだよ!それをするってことは、死ぬかもしれないんだよ!大きな力には大きな代償がくる!君はそれがよくわかってるはずだろ!」


「分かってるよ!分かってるけど、これ以外に方法はないだろ!」


「でも!この機体にそれをする装置はついてない!だから、あんなふうに簡単には出来ないんだよ!」


「それでも!やらねばならない時があるんだ!」


 湊月はそう言って影の力を強めていく。そして、その影を少しずつイガルクに流し込んでいく。シェイドはそれを必死に止めた。しかし、湊月は止まらない。影の力をどんどん注ぎ込んでいく。


 しかし、その時湊月の手が止まった。


「シャドウ!」


 湊月の名前を呼ぶ声とともに新しいアサシンブレイカーが湊月の前に降り立つ。湊月はその機体を見て目を疑った。それは、赤い機体だった。そして、ずっと動かせるつもりがなかったアサシンブレイカーだった。メリットよりもデメリットの方が大きいため、下手に動かせない使いどころが難しいアサシンブレイカーだった。


「……酸漿……!……っ!?玲香!お前!何故ここにいる!?」


「シャドウこそなんで1人で戦ってるんですか!?」


「っ!?いや……それは……」


「シャドウ!あなたは言いましたよね!私達の命が大切だと。私達が必要だと。それは私達も同じです!私達にはシャドウが必要です!」


「っ!?」


「シャドウ!勝手なことをしたのは謝ります!ですが、それでもあなたを守りたいんです!」


 玲香はそう言って紅酸漿を動かす。しかし、動きは前にイガルクを動かしていた時のようにスムーズでは無い。どこかたどたどしい操作になっている。


 湊月はそんな紅酸漿を見ながら仮面を置いた。そして、両手で操縦レバーを握りしめ目の前の敵を見つめる。


「玲香!その酸漿は活動時間が短い!対策の仕様があるフィラメルを相手してくれ!俺はあの謎の機体を相手する!」


「了解!」


 湊月はそう言って玲香と別れて別々に戦い始めた。当然フィラメル達もそれに合わせて向かってくる。


 そして、湊月は謎の機体を、玲香はフィラメルのブラウトイフェルを相手することになった。


「シャドウ!もう諦めろ!君のその機体では僕には勝てない!」


「勝てる勝てないの問題では無い!やるかやらないかの問題なんだ!初めから勝てないと決めつけて戦うことを諦めるくらいなら、勝てる見込みがなくても戦って死ぬほうが良いんだよ!」


「……それなら……!僕は本気で君を潰す!」


 謎の機体に乗る男はそう言って湊月の持っていた剣を大きく振りかぶり切りつけてきた。湊月は迫り来る刃を右に体を揺らし避けると、謎の機体の顔に向かって蹴りを叩き込む。


 しかし、その蹴りは途中で止められた。手で受け止められ逆に蹴りを叩き込まれそうになる。湊月はその蹴りを飛んで避けると少しその場から離れる。


 しかし、謎の機体は直ぐに距離を詰めて剣で斬りかかってきた。湊月はその刃を何とかスレスレのところで避けていく。


「クソッ……!俺の武器で攻撃しやがって……!卑怯な!」


 湊月がそう言った瞬間その場の空気が完全に凍りついた。そして、謎の機体は言ってくる。


「それは、君が言えることでは無いだろ」


 そして、シェイドすらも言ってきた。


「湊月、この機体は君のものじゃあ無いよ」


 湊月はその言葉を受けて何も言えなくなる。


「……」


「……」


「……まぁ、これは戦いだ。卑怯だと言って辞められる話ではない」


「そうだな。その言葉が聞けて良かったよ」


 湊月がそう言った瞬間謎の機体がいた地面の下で爆発音が響いた。そして、その地面が突如崩れた。そして、その崩れる大地に対応しきれず謎の機体は落ちていく。湊月はそれを見てニヤリと笑った。そして、その謎の機体を追って湊月も降りていく。


「フハッ!これを卑怯だと言うなよ!これは元々日本軍が埋めていた地雷だ!地中で爆発させたからな!」


「クッ……!」


「形勢逆転だな」


 湊月はそう言ってニヤリと笑った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る