広い世界を知ること
聖なる泉で金銀武器を入手した日の翌朝、俺達が滞在するツリーハウスに細身の騎士団員がやってきた
「私は国家騎士団警察部隊のリゲルです。ペルセウスさんの身柄を引き取りにきました」
「おお、来てくれたか!ということはペルセウスの身元がわかったんだな!」
来訪者の対応をすべく玄関まで来たオリオンさんが嬉しそうにリゲルに問いかける。
「いえ、残念ながら類似した行方不明者はいませんでした。……おそらく、今まで戸籍登録されていなかったのか異国の出身である可能性が高いでしょう」
「なんてことじゃ……」
リゲルが告げる残酷な調査結果にオリオンさんがショックを受ける。
騎士団員の来訪による物音で起きたペルセウスもオリオンさんの隣に立ったまま呆然とする。
「発見時の状態を加味すると、おそらく彼は捨て子でしょう。……なので、ひとまず首都にある国営の孤児院にあずけることにしました」
ペルセウスの今後の処遇について淡々と述べる警察部隊。
それに対し、オリオンさんはペルセウスを見つめてからこう言い始めた。
「でしたら、ワシがペルセウスの養父になるのはどうだろうか」
「ミスターオリオン、その提案の理由を教えてください」
「その1、後継者が欲しい。ワシは不老だが不死ではないからな。その2、話し相手が欲しい。森の駐在中はずっと1人でさびしいからな。そして、その3……」
そこまで言うとオリオンはあらためてペルセウスに目線を移し、再びリゲルの方を向いた。
「ペルセウスにバーナム大森林で国中を巡る生活を通じて『自分』というものを作ってほしい。世界は住んでいる街だけではなくてその外にも広がっているからな」
「たしかに、それは一理ありますね。より広い世界を知ることで人は成長するといいますし……ペルセウスくんはどっちがいいですか?」
リゲルがペルセウス本人に自分の処遇に対する希望を聞く。
ペルセウスはしばらく考え、うつむきつつも決意を固めた表情で静かに口を開く。
「……オリオンさんの養子になりたいです」
その後、リゲルは近くに停めていた自分の馬を使って王都へと帰っていった。
どうやら二人の養子縁組の手続きを行うためらしい。
その直後に俺とベガ、そしてアンドロも首都に帰って魔王討伐に関する作戦を練るべくツリーハウスから旅立った。
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