第4話恋敵
何がどうして白樺風が僕に興味を示しているのか未だに理解は出来ない。
けれど決して悪い気がしないのでとりあえず保留にしておいた。
だが下着姿の写真を送られてくるのは少しだけ行き過ぎた好意にも感じてしまう。
いや、それも悪い気はしないのだが…。
少しだけ白樺風のことを心配に思ったが彼女は僕以外の男子生徒に興味を示さない。
何故?
堂々巡りのように結局答えはそこに帰結してしまう。
確かめるにも僕は自分に自信がなく勇気を出すのが困難だった。
けれど遠回しに尋ねるぐらいなら出来るのではないかと自分に言い聞かせると翌日の学校を待つのであった。
本日も白樺風は僕を挑発するようにパンチラをしてくる。
目があって顔を背けると彼女は嬉しそうに微笑む。
だが本日は不幸なことが起きてしまう。
「あ!風ちゃんのパンツ見たでしょ!?」
クラスの女子がたまたま僕の後ろを通りかかり視線で理解できたのか問い詰めてくる。
「いや…偶然…」
「ちょっと!ちゃんと謝って!」
そのクラスメートに言われた通り白樺風に謝罪の言葉を口にすると彼女は余所余所しく薄く微笑んで謝罪を受け入れた。
本日はもう白樺の方を向くのはやめようと思うと放課後まで机に顔を伏せて過ごすのであった。
放課後がやってきてカバンを持って帰宅しようとしていると先程指摘をしてきた女子生徒が僕を呼び止めた。
「嶋くん。ちょっと来て」
その女子生徒、
それに従って坂倉に付いていくと彼女はそのまま廊下を進んでいく。
僕の前を歩き階段を登って屋上へと続く踊り場まで向かった。
「やっぱり変だよ。なんか慣れてない?」
坂倉の唐突な質問に僕は首を傾げた。
「いや、だって女子が階段で前を歩いてるんだよ?しかも無防備で。それなのに動揺しないし視線を動かさないのって変じゃない?」
彼女は何に引っかかっているのか頭を悩ませているようだった。
「何が言いたいの…?」
「だから!風ちゃんと普段からああいうことしてるんじゃないの?」
「ああいうことって…?」
「その…下着を見せ合う的な?」
「………」
僕はそこで言葉に詰まると眉間のあたりを軽く押さえた。
「どうなの?もしかして無理やり強制してるとか?」
「決してそんなことはないよ…」
正直に事実を伝えたとしても信じてもらえる自信がなかった。
僕よりも白樺風の方が圧倒的に優等生だ。
僕の言葉よりも彼女の言葉を信じるのが当然というもの。
「じゃあどうして慣れてるの?」
「それは…」
「それは?なに?」
「姉がいるから…」
僕の答えを耳にした坂倉は納得したように一つ頷く。
「そっかそっか。ってそんな言葉信じるわけ無いでしょ!?秘密があるなら言いなさいよ!」
「なんで…坂倉さんに秘密を言わないといけないの?」
「いや…それは…なんでもよ!」
彼女は強引なやり口で何故か僕の秘密を暴こうとしている。
理解できずに困ると踵を返して教室に戻ろうとする。
だが彼女は踵を返そうとする僕の手を掴んで強引に自分の胸に押し付けた。
「はい!触った!秘密を言わないと今のことバラすよ!?」
「坂倉さんが無理矢理触らせたんでしょ…?」
「それを誰が信じると思うの?」
「それは…」
言葉に詰まった僕は軽く項垂れると曖昧な言葉を口にする。
「坂倉さんの想像通りじゃないかな…」
「どういうこと!?」
「秘密は言ったからね…バラさないでよ?」
僕はそれだけ伝えると今度こそ教室へ向けて歩き出す。
屋上へと続く踊り場で坂倉は居ないと思っていた恋敵の存在を知って少なからず危機感を覚えているのであった。
教室に戻ると本日の日直である白樺風は日誌を書いていた。
「坂倉さんと何してたの?」
珍しく陰鬱な空気感を醸し出している白樺を見て僕は事実を伝えるのに少しだけ躊躇いを覚えた。
「なにって…さっきのことを問い詰めらてて…」
「何か疑われたってこと?」
「まぁ…」
「疑われるのは良いけど。他になにかされてない?」
「………」
言葉に詰まり黙ってしまうと白樺は席を立ち上がる。
僕の傍までやってきた彼女はもう一度同じ質問をしてくる。
「他になにかされてない?」
「胸を無理矢理触らせてきて…」
逃れることが出来ずに正直に答えると白樺は軽く嘆息する。
「はい♡これで上書きね♡」
白樺は僕の両手を掴むと自分の胸に押し当てて鷲掴みにさせる。
「両手では無かったんだけど…」
動揺して意味のない言葉を口にすると白樺は軽く微笑む。
「サービスってことで♡」
彼女はそれだけ言うと僕の手を引いて教室の外に出る。
日誌を職員室に届けると僕らは共に校舎を抜けるのであった。
結局、本日も興味を示された理由を尋ねることは出来なかった…。
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