最後の希望


「レイラさん、無事ですか?」


「無事だ、クリスタルが砕けて話せるようになった。お前と話せる日が来るとは嬉しいものだ」


 お前って言われてるけど、命の恩人と話せて俺も嬉しい。ただ、顔の近くのクリスタルは砕けてるけど体のクリスタルは砕けてない。このままだと、溺れて死んでしまう。どうやって助ければいいんだ。もう魔力がほとんどない。


「僕も嬉しいですよ。お話できて。ゆっくりお話ししたいところですが、あまり時間もないようですね。」


「そうだな。最後に話せてよかった。ありがとう。早くここから逃げろ。もう私に逃してやる魔力はない。何とかして生き残れ。」


逃げろと言われても、どう脱出するべきか。というかレイラさんを置いて逃げる事はできない。

 ん?クリスタルの破片が光ってる?


「いやです。レイラさんを置いて逃げる事はできないです。」

 カッコつけてみたけど、もう何かする魔力ものこってないんだよなあ。このまま溺れて死ぬ定めなのかなぁ。


 バシャーン、天井が大きく崩れて初めて、水の勢いが増してきた。


「バカ、本当に死んじゃう。私は良いから逃げろ。キアの氷魔法なら、ここから逃げるための扉を作れるはずだ。」


 どうしよう、扉?アイスが言っていた魔法の事か?いや、俺にその技術はまだない。どうしたらいい?


 バッシャーン、バッシャーン。

 水が一気に入ってきた。


「いけない、はやくここから逃げて。あなたまで死んじゃう。」

 星空のような色の長い髪の女性が、顔をクシャクシャにしながら叫んでいる。

 しかし綺麗な人だなぁ。


「それはできない。今ここから逃げたら一生後悔する。」

 地面は水びたしだし、天井は崩れ始めている。しかもなんだこの変な光は。


 光?これクリスタルから溢れ出てる魔力なんじゃないか?

 俺に魔力はほとんど残っていないし、これだけ水が入ってきている以上逃げ場もないだろ。

 自ずとできる事は限られてるな。この空間に満ちている魔力なら俺の残りわずがな魔力を引火させて、水を全て凍らせる。

 上手くいくかわ、分からない。でも、レイラさんを見捨てるよりも100倍マシだ。


「レイラさん、もし生きてここを一緒に出られたら。俺と一緒に来てくれますか?」


「何を言ってる、早く逃げろ。」


「逃げません。一緒に来てくれますか?」

 俺はこの人ともっと話がしたい。


「分かった。」


「約束ですよ。」


 アイス力を貸してくれ。

「永遠氷」


 あたりが一気に凍りついた。

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残業し過ぎて人生終わったけど、異世界で生きるわ。 月日 @tukitotaiyou96

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