第28話 目覚め

****キア視点*****


「うぅ」


「目が覚めましたか坊ちゃん。」


「ここは?」


「馬車の中です。」


「馬車の中?」


 ああ、そうだみんなといた時にアイスになにか魔法をかけられたんだ。アイス?

 そうだ、早くみんなのところに戻らないと。


「屋敷に戻ってください。みんなが。」


「なりません。」


「なんでだよ。みんながフレアー家に殺されちゃう。」


 父上もアイスも馬鹿じゃない。絶対に勝てない事を分かっていたから俺を逃がしたんだ。でも俺はそんなこと望んでいない。俺はみんなと戦いたい。


「戻ってくれ。戻れ!」


「なりません。坊ちゃん。旦那様やアイス様の願いを裏切る訳にはいきません。あなたは生き延びなくてはならないのです。」


 そんな、勝手だよ。一人でどうしろというんだよ。


「そんな事知らないよ。俺は家族を守るんだ。神童だぞ。」


「坊ちゃん、落ち着いてください。無理です、いくら坊ちゃんが神童でも王国の精鋭全てを相手にするなど不可能です。」


 ポタ、ポタ、ポタ


 馬車の下が赤く染まっている?これ血?


「じい?怪我しているのか?」


「大した事有りません。大丈夫です。」


「いいから見せてみろ。」


 脇腹が切られている。出血もかなり多い。これ大丈夫じゃないだろ。


「おい、大丈夫じゃないだろ、止まってくれよ。」


「止まれません。私が生きているうちに坊ちゃんを安全なところまでお連れしなくては。」


「じい、お前まで死んでしまった。僕はどうすればいいだよ。死ぬなんていうなよ。」


「坊ちゃん、助からないのは自分が一番分かるのです。それでも私は自分の仕事を全うしたいのです。」


「そんな・・・」


 バーン。


 なんだ??とんでもなく大きな音が外からした。


「坊ちゃん、お逃げください。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る