第16話 暴食

                  暴食


暴食は大罪である。そう説く宗教があるらしい。

何を以て暴食は罪となるのか。きっとその宗教を掘り下げていけば解釈が見つかるのだろうが、せっかくなので自分で考えてみようと思う。


・・・・・・食べ過ぎは自分の身体を壊すから?身体を大事にしない、つまり死へと近づくことは罪ということか。うん、一理あるな。

確かに、この国には体に神が宿るから日々大事にしろとか言う教えが昔あったって聞いたことがあったようなおぼえがある。


・・・・・・暴食できるほどの食事の量がある。食料はかつて富と同じような扱いで在ったと考えると、それをたくさん持っているというのは必然的に富の独占と同じになるとか?

うん、一理あるな。

つまり食料を他の人に分け与えることなく独占し、一人で食べ尽くし、身体を壊してしまうことが人間の罪ということか!


・・・・・・でもまずそれって食料を独占しようとする心がなければ成立しないのではないだろうか。独占する身勝手さ、つまるところ傲慢こそ人間にとって一番の罪なのかもしれない。



「オラッ!!!!!!!!」

大型の化物の腕は俺を殺さんとするばかりに勢いよく振り降ろされるだが、飛月の声のおかげで右腕のシールドの展開が間に合った。

化物の腕は俺の頭を勝ち割ることなく、シールドを力強くたたいた衝撃で後方へ倒れこんだ。


「た、助かったぜ、飛月」

俺は飛月に礼をする。コイツの声がなければいくら金色の力を纏っていたとしてもロクな事にはならなかっただろう。

化物は起き上がる。姿は虎のような姿で、鰐のような大きな顎を持っている。

噛まれたら洒落にならなそうだ。


「礼は後だ。まだいるぞ!」

俺をぶっ叩こうとした化物の他にも、化物が現れた。


「この数を相手にするというのか・・・・・・キツイな」

五代がその光景を見て絶望の声を漏らす。

今まで戦った中でも最大数は2体。

そして、今俺が視認できる限りの敵の数は・・・・・・13体。

戦い切れるか?

彼らは決して雑兵などではない。


一体一体が異常なほどの強さを持っている可能性がある。

犬や猫の化物レベルならマシだが、それでも五代や飛月では勝てるかどうかわからない。

ましてや、モグラほどの強さを持つやつがいた場合は全滅もありえてしまう。

それでは今月のうちに現れるかもしれない獣を倒すどころではない。


「飛月、五代!今すぐヘリに向けて逃げるぞ!」

俺は飛月と五代に向けて無重力の力を付与し、その場から撤退し始めた。

前方に飛月と五代を飛ばせ、俺は後方からの敵の攻撃に対応できるように後ろを跳ぶようにその場を後にする。


「龍治さん!聞こえるか?」

飛月が必死の声で通信をかける。


「飛月!どうした!?何があった!?」


「霧はアルトが払ってくれた!だが、化物の数が多すぎる!」


「撤退はしているな!帰還次第、早急に対応を・・・・・・」

通信中なのだが、途中で何かの音で旦那の声が聞こえなくなってしまった。

そして、俺の頭上までそれはやってきた。

鼓膜が破れそうなので、金の膜で耳を覆う。

しかし、膜を作るのに集中した俺は上から地面へと叩き落されてしまった。


「ガハッ!!!!!」


「アルト!」

五代が俺の身を案じて俺の名前を叫ぶ。心配には及ばない。


「だ、大丈夫だ。意識はあるが・・・・・・」

俺が落とされた衝撃で、二人の無重力も解けて二人とも地面にゆっくりと下ろされたようで、怪我をすることなく俺の方へ向かってきた。

そいつは小型で多分五代やチヨなんかよりも小さい個体。

ハエのような見た目をしていて、目が6個もある。

顔が3つあるようだ。正直見た目のグロさは化物の中でとびっきりだ。生理的に無理というのはこのために存在した言葉なのかと言ってもいいぐらい無理。

そして何よりも・・・・・・


「すげーうるせえ」

俺はそいつの羽音でついつい耳をふさぐ。

そして他にも、続々と化物たちが集まってくる。


「お、おかしい!?こいつらは人ではなく、紫のジェル状の人間を襲って捕食するんじゃないのか!?」

蝿の羽音が騒がしいがイヤフォンのような通信機からの音声は聞こえそうなので、俺は化物たちが以前の犬の個体とは異なる動きをしていることに言及した。


「どうやら、俺たちはやつらにとって食糧と同義らしいな。見て見なよ、アルト。あそこの体がブタみたいだが、牙が生えてて、顔が三つあるやつの、俺達から見て左側の顔」


「えーと・・・・・・どこだ?あ、いたいた。って・・・・・・」

丁寧に飛月が教えてくれたおかげですぐ見つけることはできたが、そいつの顔、正確にはそいつの右の顔には返り血のようなものがついていた。


「私を気絶させた犬のやつは人を襲うような行動はしなかったと聞いていたが」

五代が構えながら全体を見据える。


「どうやら、種類によって異なるようだな。外見だっていつもとは違う。顔が3つあるやつが多い。まるでケルベロスだな」

飛月も左腕は気合を入れるように振る。


「聞こえるか?三人とも?何があった?ドローンが急に動かなくなった。磁場の変化が見受けられる」

旦那がホログラム越しの通信ではなく、イヤフォンの方から音声のみの通信に切り替えて連絡してきた。


「旦那、どうやら逃げ切るのはきついみたいだ。俺たちの飛行速度なんかよりも圧倒的に速い奴がいやがってな」


「なんだと!?」


「だが、だからと言ってこのまま戦うのは三人ともジリ貧だ。なんかいい策はないか?」


「そうだな・・・・・・確認できる限りでは速そうな個体はどのぐらいいる」

俺は辺りを見回す。

蝿のような個体は3匹ほどで、豚や虎、すごく小型の栗鼠のような奴らは俺たちのところにようやくやってきたようだ。

相当蝿のやつらが速いことになる。


「三体だな。特徴は違うけど、蝿みたいなやつらだ。顔が3つあってキモいし無理」


「了解した。まずはその3匹を討伐することを優先にし、討伐次第、再びヘリへ向けて逃げてくれ」

蝿のやつらは動きが速すぎる。

俺の攻撃をかいくぐって二人の方へ行く可能性も考慮しておかないといけない。


「わかった!ってなわけだ、二人とも。俺が基本あいつらを倒しに行く。お前さんらは俺が討ち損じたやつらをどうにかしてくれ。流石に俺でもあの速さのやつを3体も一気に相手できる気がしない。だが、無理はするな!」


「了解だ」


「アルトも無理するな!」

飛月と五代が後方からサポートをしてくれる。

じゃあ!行きますか!

俺はまず、蝿以外のやつらを動かさないようにするため、重力を付与した。

何倍かなんて俺にもわからないが、少なくとも今は身動きが取れるまい。

蝿にも付与したが、何故かあまり効果がなく、視認できる程度の速さに落ちた程度だ。

まずは一匹目!

俺に飛んで向かってきた個体の羽を引きちぎろうとした。

だが、非常に硬い。

蝿型のやつらの羽は蝿型の体と同じぐらいの大きさで小刻みに動いている。

それもそうか、この体の大きさでこんなに速く飛ぶのなら筋肉も相当発達しているはずだ。


「なら!これでどうだ!」

俺はエネルギーを掴んでいる両手に流し、羽を捻じ曲げた。


「切り離せないほど固いなら、動かせないほど壊しちまえばいいよな!」

やってることが完全に悪役ポジションだな・・・・・・

俺が羽を掴んでいる間にもう一匹が俺の方へ向かってきた。


「上等じゃねえかよ!オラ!!!」

俺は掴んでいた個体を振り回して、飛んできたやつにぶつけてやった。

二匹とも地面にたたきつける。

しばらくは動かないだろう。

三匹目も俺に向けて飛んでくる。


「おいおい、まるで俺はゲームのタンク役だな」

俺は跳んできたやつの胸辺りに向けて赤いエネルギーを貯めた右腕を突き出す。

心臓のような器官がこいつからも出てきた。

俺はそれを握り潰すと貫いていた蝿の体が溶け出し、すぐに跡形もなくなった。

御免なさい・・・・・・


「まずは一匹!」

俺は心の罪悪感を払うために気合を込める。

ここで折れれば二人が危ない。

そして先ほど俺が地面にたたきつけた羽のねじ曲がっていない個体が俺の右肩に嚙みついてくる。

しかし、嚙み千切れるわけもなく噛んだ頭の牙が折れる。

俺は左手で、そいつの噛んでいる頭を掴んで握りつぶした。

そして、またしても地面にたたきつけて、右手で心臓のような器官をもぎ取った。

そいつも、跡形もなく消えていった。


「最後!」

先ほど俺が羽を捻じ曲げた個体だが、二匹目を倒したときにその場からいなくなっていたようだ。

後ろから銃声が聞こえる。

五代が持っていた銃のようだ。

銃からは赤いオーラのようなものが出ていた。


「そうか、五代も物へ力の付与ができるのか!」

しかし、トリガーを引いてるようだが、弾丸が出てこない。

玉切れのようだ。

だが、確実に蝿の動きは遅くなっている。

羽が飛べない形になり、地面を張って進んでいるので、赤の力の弾丸をよけられず、まともに食らったようだ。

飛月が蝿へ向かって黒い左腕を振り落とす。

心臓のような器官を潰されたのか、その個体も跡形もなく消えていった。


「飛月・・・・・・」


「大丈夫だ、心配するな」

飛月が左腕を見つめる。

何を思い、その表情を浮かべているのかを俺は想像するには容易い物であった。


「五代、飛月。二人とも怪我はないな。んじゃ、他のバケモンは一回置いといて、逃げるぞ!」


「ああ。速く本部に戻り体制を立て直さないと、前回の想定よりをはるかに上回る被害が出るぞ!」

五代の言うとおりだ。

何せ今回のやつらは人を食べる可能性があるからな。

俺は再び無重力の力を付与し、二人とともに飛び立とうとした。


だが・・・・・・

それはやってきた。

俺たちを逃がすかと言わんばかりに。

その音色は空に、大地に広がる。

その音色は終焉を告げる。

俺自身、それを人生で聞くのは二度目であったが、身体の震えが止まらない。

そして、夕日に染まっていた空が割れる。

まるでガラスを割るかのように。

それは姿を現した。

紫の粉塵のようなものを周囲に纏いながら。


・・・・・・それは地上に落ちてきた。

獣は咆哮を上げた。

それと共に夕日が消え、黒き闇が空を包んだ。


「あ、あれが・・・・・・」

五代がそれを唖然と見つめる。

飛月は歯を食いしばり、それを睨む。


「あれが・・・・・・獣なのか!?」


「・・・・・・マジかよ」

・・・・・・あ、あんなのと俺は戦おうとしているのか?

それはただひたすらに大きかった。

今までの化物なんかと比較にならないほど。

そして、特徴的なのが身体だ。

犬のような身体をしながら、顔が3つある。

その顔は犬のものではなく、蝿の顔だ。

全体を見渡すかの世にそれぞれ顔をひねったりして周囲を見渡している。


そして、その顔の下にはたくさんの牙の生えた大きな口もあった。

どんなものでも噛み千切り、食してしまいそうなほどの大きな口が。

獣は俺たちを見る。

3つの頭と、蝿のような目が俺たちを凝視する。

そして喉元がオレンジ色になり始めた。

俺は危機を感じた。

飛月と五代に金色の膜を張った。


「ア、アルト!何してんだよ!逃げるぞ!」

遠く後ろの方へ飛んでいく飛月が何か言っているが、俺の耳には届かない。

俺はそのぐらい必死だった。

必死にこの状況を打開する方法を考えていった。

通信するほどの暇はない。

必死の策を練る中で思いついたのがシャボン玉だった。

以前、犬の個体から心臓を取り出し、本部に持って帰ってきたときのように。

俺は二人を覆う膜に無重力の力を付与し、力の限りの衝撃波を出してヘリのあるマンションの方へ吹っ飛ばした。

何か声が聞こえたけど、遠すぎて聞こえてこない。


俺は、チヨの言っていた巨人の造形を再び思いだす・・・・・・

だが、特徴はすべてこの人間態で出来上がっている。

なにが足りないんだ!?

必死になって考えた。


そういえば、チヨのやつが笛みたいな音が巨人になる前に聞こえたって言っていたか。

俺は笛の音をイメージする。

そして、巨人の造形をできる限りの想像で頭の中を埋め尽くす。

その瞬間、獣の口の光が俺に向けて放たれようとしていた。

だが、俺の中で巨人がこんな感じというイメージが完成した。

笛の音が聞こえる・・・・・・

周囲が一気に静まり返り、その音しか俺の耳に届かない。

行くぞ・・・・・・!!!


「輝きやがれ!!!シュラバァァァァァァァァ!!!!!!!!」


俺は黄金の光に包まれた。

巨人の光は獣の吐いた炎をかき消し、次第に大きくなっていく。

獣は巨人から発する虹色の光の勢いで後方に少しだけ吹き飛ばされる。

そして、黄金の光は晴れた。


「あ、あれがアルトなのか?」

私、五代はアルトがいた方向から出現した黄金の光の柱のようなものが晴れて巨人が現れたのを目撃している。

7月5日に出現し、私たちが映像でとらえた時よりも恐らく大きくなっている。


「ああ、あれがアルトだ。間違いなくな」

飛月も巨人を眺めている。

あれがアルトという確信を持ちながら。

既に彼のおかげで私たちは戦線を離脱することができた。


しかし、だからと言って彼をおいていくこともできない。

通信は完全に途絶えている。磁場の狂いだろうか。

あの闇には、通信機能を妨害する力もあるようだ。

空がこんなに暗いのは生まれて初めてだ。

・・・・・・どこまで闇は広がるのだろうか。


巨人は構えた。敵を撃破せんとする堂々とたる構え。

獣は起き上がり四つん這いの足で巨人に向かって走り出した。

巨人は自分に突っ込んできた獣の頭を手でガードし突進の威力を抑え込む。そして獣の首根っこを掴み、気合の声を上げながら地面へとたたきつけた。

獣が足をじたばたさせながら起き上がる。

巨人と獣がにらみ合う。


・・・・・・

獣が無駄な動作をすることなく口から火炎を放つ!

巨人は出遅れたが、両手ですかさず光線を放つ!

その光線は細長いながらも、火炎とぶつかり合う!

そして、火炎を押し返し、真ん中の顔を消し飛ばした。

獣の動きが止まった!

しかし、止まったのはほんの数秒だけ。獣は再び何事もなかった顔ように動き出す。

油断していたのか、巨人は獣の突進をもろに受けてしまう。

身構えていなかった巨人は後方へ吹っ飛ばされ、すさまじい勢いで建物にぶつかってしまった!

建物が亀裂を立て、豪快な音と共に崩れていく。巨人の重さと、吹っ飛んだ勢いに耐えきれなかったのだろう。


・・・・・・

巨人はゆっくりであったが再び立ち上がる。

足取りが若干フラフラしているようだ。どうやら先ほどの突進のダメージはすさまじいものであるらしい。

そのすきを見て間髪入れず、獣が二つの口から舌のようなものを出してくる。

二枚だけではない。

数十枚も細長い物を出してくる。

巨人はしゃがみ込み、その舌を交わす。

しかし、その舌は巨人の手前まで行くと急カーブをした。

先ほど巨人が人間だった時に無重力の力で動きを封じていた化物たちへ向けられたものだった。

化物たちは舌でつかまれ、次々に鋭利な牙のある口の中へ運ばれていく。


・・・・・・巨人が人間だった時に倒した3体以外の10体がすべて喰われると、紫色の不気味な光を纏い始める。

巨人は驚いたそぶりを見せながらも、その光をかいくぐるように右手で拳を放つ。

獣の胸部を貫かんとするばかりに。


しかし、身体は非常に硬く殴ってもひるむ程度でしかなかった。

巨人は負けじと左手でも殴ろうと構えた。

瞬間、獣は二つの顔から火炎を吐き出し、巨人の顔面へと叩き込んだ!

火炎の猛烈な勢いに巨人は一瞬怯みこそしたが、腕で受け止め体勢を立て直し受け止めようとする。


しかし、耐えきれなかった。巨人は地面に倒れこんでしまった。

顔を抑え込んで、痛そうに体を動かしながら。

倒れこんだ巨人の下に獣はとびかかり、巨人の体を押しつぶした!

痛みを感じ、巨人は存在しない口で叫ぶ。あまりにも痛々しい声で。

その身体は、真ん中の光輝く龍玉の光がだんだん失われ始め、金色の体が次第に土のような色に変色し始めていた。

巨人は左右の腕を獣の左右の口で噛まれた。

巨人の腕から黄金の光のようなものがあふれ出る。人間で言う出血に当たるのだろうか。再び巨人から叫び声が上がる。


だが、やられたままでは済まされない。巨人は足で獣の体を蹴り飛ばし、何とか脱出する。

しかし、金色の体はほとんどが土のような色に変色しきっていた。

胸の玉の光もほとんど失われている。

もう体はふらふらな状態だ。

獣は1本の下を伸ばす。巨人の首に巻き付き、抵抗させないように力強く縛り付ける!

巨人は残された力を使って下を千切ろうともがく!

しかしもう1本、舌が巨人に向かって放出された。その舌は巨人の胸の玉に触れると、紫色の光を放つ。

それと同時に舌が金色のエネルギーが獣の体の方に流れる。

苦しそうに巨人から声が上がる。だが、先ほどよりも段々弱弱しい声になっていく・・・・・・


紫の光が消え、舌に流れる金色のエネルギーも消えた。

巨人は胸の輝きを完全に失った・・・・・・

体も赤い腕だけを残して他の金色の部分はすべて土のように濁った銅色に変色しきっている。

巨人は膝をついて・・・・・・

とうとう力尽き、倒れてしまった・・・・・・

赤く光る眼の光さえも、途絶えてしまったのだ。

獣はそれを見るとすぐに空間を割り、再びどこかに消えてしまった。


巨人、シュラバは・・・・・・

立花在人は敗北した。


「アルト!どこだ!?アルト!」

飛月がアルトの名を叫ぶ。

私もアルトの名を叫んで彼を探す。

倒れこんだ場所を見つけようと懸命に探す。崩れた建物、割れた道。私たちは走って探す。

彼はどうなったのか?生きているのだろうか?

それを考えるのは後だ。探さないと!

先ほどアルトが消えた場所のあたりにたどり着いた。

そこには、うつ伏せに倒れこんだアルトがいた。


「アルト!おいアルト!」

飛月がアルトの肩を掴んで揺らす。


「待て、揺らすな飛月!」

私は飛月の揺らす腕を掴んで止めた。

アルトの鼻元に手を近づけ、呼吸をしているか否かの確認をする。


「呼吸は相当浅いがあるようだ。生きている」

飛月が肩を下ろす。

私はアルトの頬に触れて驚愕した。


「だが体温が感じられない!まるで死人のようだ!」


「それに、身体が結構細くなってる」

アルトの体はまあまあがっちりしている。

組織に入る前から鍛えていたと言っていたが、今の倒れこんだアルトはかなり細くなっている。

体から筋肉や脂肪、取り入れた栄養が無くなったかのようだ。


「速く本部へ帰ろう。生きてはいるが、何がこれから起こるかわからないからな」

私は思ったよりも冷静だった。

彼なら必ず帰ってきて、倒してくれるという謎の確信が私の心にはあった。


「そうだな。俺が担ぐよ。出来る限り早足で行こう」

私と飛月は周りの警戒をしつつ,その場を後にした。

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