第10話 あだ名決定 1/2

「よいしょっと……取り敢えず、荷物はこれで最後だね」


「すみません。手伝ってもらちゃって」


「いいのいいの。気にしないで」


 荷物を運び入れるのを手伝ってくれたユミさん。


 1カ月だけとはいえ、結構な量あったから正直助かった。


 因みに、部屋はユミさんの隣。


 元々空いていたらしい。


「今はみんな仕事で出払ってるけど、夜には帰って来るから。歓迎会しようね!」


「えっ、いやいやいや。そんなのいいですよ」


 正式に加入することが決まったわけでもないのに。


 歓迎会なんかされたら断りずらさが増す。


 退路を断たれる感じ。


 まあ、心の半分ぐりらい「入ってもいいかな」とは思ってるんだけどな。


 それはここだけの秘密。


 マネにも話していない。


「いいじゃんかあ。騒ごうよ。お酒飲もうよ!」


「それってユミさんが騒ぎたいだけじゃないですか」


「あっ、大正解!」


 ぴょんっと跳ねながら言われた。


 なんだ、この人はウサギなのか。


 可愛いな。


 って、おい。


「里香さんと春さん、未成年ですよね」


「……」


 無言で斜め上見たってダメですよ。


「広美さんも、今年で20歳だから……未成年ですよね?」


「そうだったかなあ」


 しらばっくれ方が下手クソだな。


 視線が彷徨さまよいまくってるぞ。


「根本的に、私も未成年です」


「ありゃ、そうだっけ」


「そうですよ」


 たしかに大人っぽく見られるけど。


 何度も成人に間違われたことがあるけど。


「ぴっちぴちの高校生かあ」


「ぴっちぴちって……」


 久しぶりに聞いたな。


 ほぼ死語なんじゃね。


「羨ましい」


「私はユミさんの方が羨ましいですよ」


「え?」


「あっ」


 しまった。


 余計な一言を言った。


 ユミさんの目がキラキラと輝いて、私をじっと見つめてくる。


 上目遣い。


 無理、待って。


 この人の可愛さは、惑星一つ吹き飛ばせそうなぐらいだ。


 無自覚なんだろうか。


 いや、多分わかってやってる。


 一番たちが悪い。


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