第10話 あだ名決定 2

「いやあ、あのですね」


「うんうん」


 なんて言えばいいんだろう。


 うーん。


「私、ボーイッシュな見た目じゃないですか」


「そうだね」


 こくり、と頷いた仕草。


 可愛いなあ、おい。


「別に好きでやってるんですけど。よく勘違いされるんですよ。可愛い系は嫌いなんでしょって」


「ほうほう」


 慎重に言葉を選びながら、話しを続ける。


「そうじゃないんですよ。可愛い服を着るのは嫌いですよ。でも、可愛い人とか可愛い物を見るのは好きなんです」


「成程っ」


 手をパンっと叩いたユミさんは、

「さっきの『羨ましい』っていうのは、私が可愛くて羨ましいってことなんだね!」


 やっぱりこの人ポジティブシンキングだな。


 凄い前向きじゃん。


 ただ悔しいことに、

「そういうことですね」

 正解なのでなにも言えねえ。


「いやあ、麗華ちゃんに『可愛い』って思ってもらえるなんて。嬉しいな」


 ふふふっ、と首をコテンと横に傾けながら言ったユミさん。


 相変わらずあざとい。


「ファンから言われ慣れてるんじゃないですか」


「そりゃね」


 ですよねー。


 当たり前だよなー。


 彼女が動くたびに揺れる姫カットを見つめながら、そう思った。


「でもね」


「ん?」


 でも?


「麗華ちゃんに言われると特別って感じがするの。うふふっ」


「……」


 フリーズしちゃったのは仕方ないだろ。


 これはダメだ。


 この人はダメだ。


 決めた。


 今日からこの人をリア恋製造機と呼ぼう。


 あまりにも、あまりにもあざとすぎる。


 これから毎日この攻撃をくらうことを考えると、それだけで頭が痛くなるのでした。

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