第9話 簡単には出せない答え 2

「はい?」


 今なんて言った。


「生活、ですか」


「うん」


 うん、じゃねーよ。


 どういうことだよ。


「そんな怖い顔すんな」


 おっと。


 気づかぬ間に片方の眉が上がっていたらしい。


 って、おい。怖い顔言うな。


 目つきが悪いのは元々なんですよ。


「『HANA-AKARI』は一軒家にみんな住んでるんだ」


「シェアハウス……的なことですか」


「そうだね」


 成程。


 とはなんねえよ。


「なんで私がそこに」


「あぁ、すまない。生活するだけじゃなくて、彼女たちと一緒にレッスンを受けてほしい」


「はあ」


 成程。


 レッスンを受けるんだな。


 昨日みたいに。


 じゃねえよ。


「レッスンを受けるのはいいです」


「いいのか」


 アイドルになる覚悟はまだない。


 でも、レッスンは受けてみたいと思う。


 思うけど、

「はい。って、言いたいのはそこじゃないです。なんで一緒に暮らさないといけないんですか」

 共同生活に加わる必要はないだろ。


「レッスンを受けるだけじゃ、メンバーとの相性・性格がわからないだろ」


「成程」


 この説明に関しては納得。


 社長の言う通りだ。


 1カ月の期間があるとはいえ、レッスンだけではメンバーと仲良くなれるとは思えない。


「彼女たちのことを深く知って、麗華には決めてほしい。アイドルになるか、ならないか」


 どうする。


 なんて悩まない。


 一人で考えていたって答えがでないんだから、

「わかりました」

 

 4人は私を歓迎してくれている。


 社長も私に無理強いしない。


 だから、私もみんなと真剣に向き合う。


 そのための、決断だ。

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