第6話 華があっても売れない

「前に社長から聞いただろうけど、今このグループは低迷してる」


「うん、聞いた」


 あの後SNSで調べたから、なんで低空飛行してるのかも。


 彼女たちのコンセプトは『お人形』。


 海外の人形じゃなくて、日本人形の方ね。


 その点ユミさんの髪色はコンセプトと真逆だけど。


 彼女だけじゃないな。


 リーダーの広美さんだって多分イエローブラウン。


 グループ最年長のユミさんと、リーダーの広美さんがコンセプトガン無視してる。


 どうなんだ、それ。


 いいのか?


 いいのか、低迷してるんだから。


 ちょっと前の写真を見たら全員黒髪だったし。


 巻き返そうと頑張ってる最中なんだろうなあ。


「やっぱり、アイドルが和ロックってダメなのかしらねえ」


「うーん。そうなんじゃない?」


 アイドル界隈のことは全然知らないからなんとも言えないけど。


 今練習している曲だって、和ロックだ。


 初めて聞く曲。


 私は嫌いじゃない。


 でも、アイドルが好きな人にとっては……ねえ。


 需要が全くないとは思わないよ。


「メンバーたちは悪くないんだけどね。特にユミは、王道のアイドル顔だし。歌もダンスも、みんな悪くない。むしろ上手い」


「そうだね」


 ダンス未経験の私でもわかる。


 みんなダンスが上手い。


 広美さんが1番かな。


 キレがあって、力強い。


 ユミさんは広美さんより力強くないけど、しなやかなで華がある。


 センターとしては十分。


 って、またユミさんのことを見ちゃってる。


 どうしてだろう。


 早く帰りたいと思っていたはずなのに。


 もっと、彼女の、彼女たちの踊りを見たいと思ってしまったのは。

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