第3話 お泊まり

 桃は由利恵の家に行った。

 彼女は愛車は50CCの原付である。

 赤と桃色にカラーリングされた、中々に派手なバイクであった。


 桃は大きな門の前に愛車を止めた。


「こ、ここがおまえの家なのかよ?」


「ええ。それがどうかしたの?」


(す、すげぇ。門から屋敷が見えねぇじゃねぇか。庭が広すぎだろ)


「なにをボサっとしてるのよ。早く入りなさいよ」


「お、おう」

(あたしん家は団地だからな。まさか、こいつがこんな金持ちのお嬢様だったとは思わなかったぜ)


(ふーーん。この原付、カラーリングはオリジナルのようね。ま、まぁまぁ、可愛いじゃない。それに、キーストラップがあたいと同じ熊ちゃんなのはポイント高いわ。こいつ本当はかなりの熊ちゃんファンなのでは?)


 桃は豪華なおもてなしを受けた。

 美味しい料理を食べ、大衆浴場のごとく広い風呂に入る。


 泊まる部屋は客室になったのだが、


(へへへ。ここからだぜ。熊ちゃん合戦はよぉ!)


 桃は熊ちゃんのパジャマを着ていたのだ。


「うっ! そ、そのパジャマは限定品の! あ、あなた姪っ子に買ってたんじゃないの!?」


「こ、これは姪っ子が着なくなったヤツをたまたま貰ったんだぜ!」


(くぅぅ! す、凄まじく可愛いわ! 熊ちゃんの顔が水玉模様のように散りばめられたデザイン。桃の小柄な体にフィットしてめちゃくちゃ似合っているわ! 反則よ! こ、こっちだって!)

「ちょ、ちょっと待ってなさい!」


10分後。


 由利恵は紫色の浴衣に身を包んで現れた。


「どうかしら?」


「なにぃいい!? それは京都限定の熊ちゃん浴衣じゃねぇか!」


「フフフ。もちろん、姪っ子のお古よ。着なくなったから貰っただけだから」


(くぅう……。可愛いさの中に色っぽさがあるぜぇ! 由利恵の綺麗な銀髪と紫の生地が映えやがる。クソがぁ! めちゃくちゃ似合ってるじゃねぇかよ! ま、負けてられねぇ。こうなったらこれを出すしかねぇぜ!)


 桃は団扇を取り出した。


「あーー、暑い暑い」


 さりげなく、パタパタと仰ぐ。


「ゲェエエ!! そ、その団扇はぁ!? 博多祇園山笠の限定デザイン!! 派手やかで美しい! 和と可愛いさの混合。なんて物を出してくるんだぁ!!」


「ククク。これはイベントでは手に入らないんだぜ。福岡に行った時に買ったんだぜ」


(こ、このままでは負けてしまうわ! こ、こうなったら……)

「部屋を移動しましょうか」


「ほぉ? どこに行こうとあたしの勝ちは揺るがないようだがな? この団扇ほどのレアなアイテムは見れないと思うが?」


 2人は移動した。


「ここは、姪っ子の部屋なのよ。今日はたまたま留守にしているので入っていいことになっているわ」


 扉を開けると、桃は驚愕した。


「ゲェエエ!! な、なんだとぉおお!? す、すごすぎるぅうう!!」


 その部屋は熊ちゃんグッズで埋め尽くされていたのだった。


(フフフ。私が集めに集めた熊ちゃんグッズ部屋よ。勝ったわ)


「こ、これは姪っ子の部屋なのか?」


「フフフ。そうよ。姪っ子の部屋よ!」


 丁度その時、ウエイトレスが通りかかる。


「なにを話されているのです? お嬢様に姪っ子はおられませんが?」


「ちょ! な、な、なにを言ってんのよぉおおお!!」


 桃はニヤリと笑うのだった。


──

次回、最終回です!


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