第29話 谷と崖と鉱山の街「アイヴラツェーン」

 1節 新たな町は地下から


「次の駅いつだろ……」(如月


「流石にもうすぐじゃないか?」(朝凪


 今は僕らの目指す新たな街『アイヴラツェーン』へ向かっている。



 とりあえず街に着いて何よりも先にすることは、燃料の補給だ。



 さっきから燃料のことばっか考えてる気もするがないと色んな意味でまずいのでさっさと補給したい。わざわざ高い金払ってレッカーなんて呼びたくない。そもそもそんなことできるかわからんけど。




「お客様、次の駅が終着駅です。お降りください」


 そう乗務員さんに声をかけられた。


「わかりました」(時雨


「降りましょう」(時雨


「ほーい」(睦月



 僕達は駅を降りた。そして、その独特な景色に驚いた。



「地下駅だここ!?」(朝凪


「うわほんとだ地下だ」(如月



 そう、地下駅だったのだ。



 おそらく壁に駅をわせると機関車が重くて落ちるからとか、理由はそんなあたりだろう。とにかく、何よりも心配なのは——



「待ってSLで地下駅とか煙で死ぬぞ……ってSLじゃない!?」(朝凪


「え?いつの間にか電気機関車になってる……」(睦月


「待って見た目と型番気になるちょっと待って」(朝凪


「ここぞとばかりに鉄オタ発揮すんなや」(矢矧



 僕は先頭の機関車へ歩いていく。そして型式番号を見てみる。



 EF-1500型。なんかすごい聞いたことあるような型式だ。ついでに見た目も。



 その昔、日本国鉄にEF15型という電気機関車がいたのだが、そいつと見た目がとても似ている。茶色い箱型の本体に、その前後に人が乗れる手すり付きのロフトがある。



 まあそんなまじまじと見てたらやばいやつだと思われるしみんなを待たせてしまうのでさっさと戻ることにする。すでにやばいやつだ?知らんな。




 2節 ついに見れた不思議な景色



 そんなこんなで現在は満タンまで燃料を補給して、なっがいトンネルを走っている。無駄に3000ヘレトも取られた。くそ。



「あ!外見えてきたよ!」(如月


「お、ほんとだ、明るくなってく」(朝凪





「おおぉぉぉーーーーー!!!すっごーーー!」(如月




「うわ凄いなこれは」(朝凪




「すご!めっちゃ綺麗じゃん」(睦月




「すげぇな。こんな景色が見れるなんて」(矢矧




「本当にすごいです……!」(時雨




 その景色は、僕らの想像するより規模が大きかった。



 峡谷の幅は、完全に目分量でしかないが500メートルくらいだろうか。そして、壁に沿うような道路からは、とてもじゃないがその長さはわからない。山脈の伸びる方向と同じ方向に伸びているのだろう。後で地図を見てみよう。



 この街は、そのサイズ感以外にもすごいところは山ほどあるのが見てすぐわかる。



 まず、話通り本当に谷に街がある。谷の周辺にとか、谷の底にとか、そういうのじゃなくて谷の壁に家とか色々なものが張り付いている。道とか、家とか、工場とか、線路とか、店とか。



 今見てみると、谷の底にも谷の周りにも街あるようだ。気づかなかった。



 谷底には綺麗な川が流れていて、普通の街や工場も建っているようだ。



 壁の建物は、壁をくり抜いて建ててその前に道路を作ったようなものや、道が通っていない壁から張り出したようなものまで様々だ。だが、大半の家は埋め込まれているような形の家だ。



 それは別にいいのだが、道が思ったより多い。



 両側の壁の間に通る橋は400メートルとかぐらいの間隔で1本ある。ついでに上下の坂道も中々多い。怖くてしょうがない。



 反対側を見てみると、高さの違う道を繋ぐ時も中々独特な繋ぎ方をしているようだ。なんというか、言葉に表現するのが難しい。



 上の道を下がる坂道にし、下の道は壁にトンネルを通して並走させるようにしてから繋げて水平な道にしている、とでも表現すればいいのだろうか。



 とりあえず前の世界じゃこんな街あるわけもなかったので今とても不思議な感覚だ。とにかく運転が怖い。今時速40キロぐらいしか出ていない。



 あと意外と車が多い。広い、というか長い街だからだろうか。



 というか、



「僕らこれどこに行ってんの?」(朝凪


「確かにな」(矢矧


「え?どっか行きたいところとか無いの?」(如月


「これといってない」(朝凪


「まじか……」(如月




 〜〜〜〜〜〜




「あ、時雨がまた矢矧にしがみついてる」(睦月


「別にいいんだがさっきトンネル入ったから今地下だぞ?」(矢矧


「コワイ……タカイトコロコワイ……」(時雨


「だから今は高いところじゃないんだって」(矢矧


「高度計と地図いわく一応ここ平均標高4000メートルあるみたいだけど」(朝凪


「お前は話をややこしくするな、というかなんでただの車に高度計なんかついてるんだよこいつ。測量用にでも作られたんか?」(矢矧


「いや知らんし例えがニッチすぎるだろなんだ測量用って」(朝凪


「あれじゃね?うちらここに飛ばした高津真衣あれの趣味じゃね?」(如月


「便利すぎるだろその言葉。というかあれ呼ばわりすな」(朝凪


「てか話がずれすぎてるんだよ脱線した勢いで別の路線入るなや」(朝凪



「お前が元凶だよ」(矢矧



「まあまあ」(朝凪



「流すなや」(矢矧



「んで矢矧さ、確か外が見れなくなる網みたいなの張れた気がするから張ってやって」(朝凪



「いや俺だって景色みたい。時雨には我慢してもらお」(矢矧



「唐突にクズ発言すんなや」(朝凪



「うぅ〜……矢矧がいじめてくるぅ……」(時雨



「いや嘘だよ流石に。時雨よ閉めるからそんなうるうるした目で見ないでくれなんか

 申し訳ない気持ちになるから」(矢矧


「なるじゃなくて最初からそうなっとけ」(朝凪


「いやどういう表現?」(睦月


「とりまさ、時雨がこのままだと常時情緒不安定な可哀想な子になるから谷底目指すわ」(朝凪


「そうしてください……」(時雨




「これで一件落着?」(睦月




「いやまだこの件は落ちても着地もしてないんだけどね?」(朝凪




「まあまあいいじゃないか朝凪くんや」(睦月




「なんだそのキャラ……まったく」(朝凪

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蒸気と魔法の幻想世界へ —終われない旅は秘境から— ロクボシ @yuatan

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