第28話 燃料がねぇっ!!

 1節 燃料がやばい



 今は一度山脈のはしから離れ、盆地の中を走っている。遠くには線路やトンネルも見え、のどかな風景だ。



 だが、



「やべぇ」(朝凪


「どうした?」(矢矧


「山登るために出力上げてたせいで今燃料が4分の1しかない」(朝凪


「やべぇ」(矢矧


「だいじょーぶ多分どうにかなる」(如月


「どうにかならなそうだな」(矢矧



「オイコラ矢矧」


「なんだね?」


「そんなウチが信用ならないかね?」「うん」「即答すんなや」


「とりあえずさ、近くに街あったら寄っていい?」


「いいですが、そんな話をしてるうちにもう小さな町が見えてきましたよ」


「お、ほんとだ」


「じゃあ坂田そこ寄ってー」


「言われんでも行くわ」




 2節 農牧の村“スヴァテレント”



「あの村なんて言う名前なんだ?」(矢矧


「“スヴァテレント”だって」(時雨


「また新キャラかよ覚えられんわ」(矢矧


「いやまだ4つしか出てきてないから」(朝凪


「もうそんな色々行ったっけ?」(睦月


「2つは行ってないけど、

 ・農業の街 ビレノート

 ・魔法とエルフの街 ペルニジム

 ・谷と鉱山の街 アイヴラツェーン

 ・農牧の村 スヴァテレント

 の4つだよ」(朝凪


「あぁ、名前だけでももうそんなに出たのか……」(矢矧


「ま、とりあえず燃料スタンドを探してスヴァテレントへGO!」(如月


「いや村にあるか?」(矢矧


「まあ見た感じ線路見えるから駅はあるっぽいし最悪列車に載せてもらえばどうにかなる」(朝凪


「それもそうか」(矢矧




「おー!着いたー!」


「助手席で叫ぶなと言っとるでしょーが」


「あ、時雨が矢矧から離れた」


「よかったです……やっと平地が見えなくなりました……」


「まあここ山脈つっても盆地みたいになってるから平地ではあるけどな」


「普通の盆地に比べてめっちゃ標高高いけどね」


「とりあえずガソスタ探そうぜ」


「いやそんなガソスタみたいなもんじゃないだろ……たぶん」



 3節 やっぱりなかった



 まあ、案の定というか、やっぱり燃料を補給できる場所はなかった。



 というか燃費悪すぎるだろこいつ。



 もうすでに20%を切った。つまり5分の1。



 とりあえず限界まで出力を下げて、早く駅まで行かねば。さもないと車が死んじまうぞ。



「とりまさ、駅行こか」(睦月


「せやな」(朝凪


「なかったね」(睦月


「だね」(朝凪


「なんかさ、坂田がさ」(如月


「朝凪なんかやばいの?」(睦月


「FXで有り金全部溶かした人の顔みたいになりかけてる……」(如月


「いや気持ちはわからなくはないけどなんで顔芸してんだよ」(矢矧


「顔芸に入るんですかね?これ」(時雨


「というかFXで有り金全部溶かした人の顔とか懐かしいな」(矢矧


「別にそんな顔にした覚えはないんだけど?」(朝凪


「うわいつの間にか治ってるきも」(如月


「聞き飽きたわそのシンプル暴言」(朝凪


「今度はちょっと前に流行った曲みたいなセリフ言ってる……」(如月


「あれもう2、3年前ってマ?」(睦月


「マだよ」(朝凪


「やばあ」(睦月


「と言うかさ、列車来てんだからさっさと積み込め」(矢矧


「さーせん」(朝凪



 以前ビレノートからペルニジムへ行く時にやったように、貨車に積載する。



 燃料は15%。ギリギリである。一応さっき矢矧が貨物プラットフォームに置いてある小さな燃料スタンド的なタンクから軽油ディーゼル燃料を買ってきてくれたので、現在補給中。ちなみに1リットル130ヘレト、1950ヘレトで15リットル買ってきてくれた。



 軽油は前の世界にもあったので比較できるが、リッター130は割と高い。まあ山脈の盆地だし、蒸気技術ほど発展しているわけではなさそうなのでこんなものだろう。それにしてもなんで単位といい燃料といい今までの世界と同じものなのだろうか。不思議だ。



 5節 いざ、『谷と崖と鉱山の街』へ


「朝凪早く乗ってー!」


「わかったわかった」



 今はもう積み込みも補給も終わって、列車内で待機している。



 とりあえず燃料は35%くらいまで回復した。ここまでの勢いで行くとなんかエンジンがやばい気がするので工場で調べてもらいたい。



 あ、でもこんなバケモノエンジン見てもらえる工場あるのか……?



 それはまあさておき、もう発車するので適当に車窓を眺めるとしよう。





「おーすごい山の中に入ってく」(如月


「トンネルあると困るから窓閉めとけよ?」(朝凪


「えなんで?」(如月


「煙まみれになりたいならそれでもいいけど」(朝凪


『それ俺ら(私達)も巻き添え喰らうんですけど』(時雨・矢矧


「しゃあないなあ閉めてやろう」(如月


「というか僕ら以外のお客さんにも迷惑かかるから」(朝凪


「もう閉めたじゃん!」(如月


「はいはい静かにしてねー」(睦月


「睦月たのんだ」(朝凪


「任された」(睦月


「ぐぬぬ……揃いも揃って子供扱いしやがって……」(如月




 そんなわけで、今は盆地を抜け山地へ突入した。まあ最初から山脈の中なわけだが。



 蒸気機関車の牽引なため、さっき如月にトンネルで煙が入ってこないよう窓を閉めるように言ったのだ。



 正直この世界ならディーゼル機関車でも煙ヤバそうだけど。



 トンネルを通り、橋を通り、列車は複雑に走っていく。それにしてもトンネルが多い。10分に1つくらい、多い時は抜けて数十秒でまた次の、というぐらいにトンネルが多い。



 元から昔の山岳線はトンネルや橋は多いがそれにしたってすごい量だ。




 1時間ぐらいずっと揺られた後、僕らを乗せた列車はついにアイヴラツェーンへ到着した。

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