4章 巨大山脈で長旅を

街に着くまでが大変です

第27話 アンディア山脈へ

 1節 巨大山脈の山登り



「おおー!もう目の前じゃん!」(如月


「だね。昨日とか一昨日あたりから坂道がだいぶ増えて来たからそろそろ山登りかなあ」(朝凪


「そんなこと言ってたらトンネルですぜダンナ」(矢矧


矢矧お前そんなキャラじゃないだろ」(朝凪


「なんかいいじゃんこういうの」(矢矧


「何がやねん」(朝凪



 今日はペルニジムを出て丁度1週間の日。



 そろそろ異世界に降り立ってから1ヶ月になる。時の流れとは早いものである。



 坂道が増えてきたこの道は、本格的に山へと入っていく。



 運転を始めて最初のトンネルへ入る。



 ヘッドライトと室内灯を点灯させ、突入する。



 トンネル内には現代のようなオレンジ色のライトなどは無く、ヘッドライトが無ければ真っ暗である。



 一応今までに十数回ほど他の車とのすれ違いはあったが、それらしいものは見えないので大丈夫だ。



「抜けたー!……ってたっか!?」


「うわすご」


「結構登ってるとは感じましたがここまで登ってたのですね・・・」


「だな……」



 一応、確かにエンジン音が重くなり、感覚的にもだいぶ登っている感覚はあったが、トンネルを抜けると既に100メートルくらいだろうか、登っていた。



 シフトレバーを1段落とし、スロットルレバーを上げる。



 するとまた速度が少し上がった。



「これ坂が落ち着くまでに1日かかるとかないよね?」


「そんなことはない・・・と信じてる」


「とりあえず日没までに上り切りたいですね」


「だね」





 道はさらに曲がりくねり、林の中を通ったり、トンネルを通ったり、橋を通ったりと、さながらゲームのようだ。




 僕は今理解した。この道に車が少なく、自動車運搬用の鉄道貨車に車が多かった理由を。





 こんな道登るくらいなら時間と金がかかっても列車に載せて運んだほうがいい。





 2節 夕方までに新しい街へ!



「ねー朝凪」(睦月


「なに?」(朝凪


「夕方までに次の街に着きたいんだよね?」(睦月


「そうだよ?」(朝凪


「今何時?」(睦月


「んー……ちょっと矢矧確認して」(朝凪


「あいよっと……今は16時ちょうどだ」(矢矧


「次の街まで何キロ?」(睦月


「えーとどれくらいだろ」(朝凪


「あれ?そもそも次の街の名前なに?」(朝凪


「おっと?」(睦月



 まずいぞ。色々雲行きが怪しくなってきた。



 時雨に調べてもらった所、次の街の名前は“アイヴラツェーン”という名前の街だそうだ。




 各属性の魔宝石の鉱山がある街で、


 ・巨大な峡谷きょうこくの壁面に道や建物が張り付いているような前後と上下に広い街並み

 ・谷底に流れる白銀の川


 が特徴だそうだ。



前の世界で有名だったアニメ映画の鉱山街にそっくりだ。



 そのため鉱山街ではあるが観光客も多いとのこと。今から楽しみだ。



 3節 到着しませんでした!


「なあ」(矢矧


「すまんな」(朝凪


「これは」(時雨


「もう」(睦月


「ダメだね」(如月



『夜になった』(全員


「いやまじで申し訳ない」(朝凪


「まあそもそもこの山脈自体規模がでかいからな。頂上まで行かなかったのもしょうがない」(矢矧


「ですね」(時雨


「同感」(睦月


「私も」(如月


「やさしすぎてつらい…………」(朝凪


「とりあえず、路肩ろかたに駐車して車中泊しましょうか」(時雨


『りょーかい』




 その後はいつものように夕食を作ってもらって、食べて、笑って、寝て、一日が終わった。




 4節 登山、2日目突入の巻



「みんなおはよー」


「おは」「おはよー」「おはよう」「おはようございます」


「朝ごはんは昨日作っておいたので食べましょう?」


「おおさすがしぐれん」


「それほどでもあります」





 時間は8時20分。前までならもうすぐ学校でホームルームが始まる頃、僕らはまた山道を登り始めた。



「あ、燃料計減ってる」(朝凪


「おいおい、ガス欠起こして停車とかやめてくれよ?」(矢矧


「いや、減ってるって言っても2分の1くらいだから」(朝凪


「いやだいぶ減ってるじゃん」(睦月


「ねーちゃんが珍しく正論言ってる……」(如月


「んだと妹の分際で」(睦月


「なんかいつもより荒れてますね……」(時雨


「まあ睦月は如月相手だと割と怒るからなあ。ある程度荒れるのはしゃあない」(朝凪


「今のはある程度に入るのか?」(矢矧


「まあまあ。とりあえず燃料はアイヴラツェーンに到着したら補給しよう」(朝凪


「だね〜」(睦月


「いやテンション戻るのはえーな」(矢矧


「まあまあいいじゃないか矢矧くんや」(如月


如月お前如月お前で戻るのはえーな」(矢矧


「とりま鉱山の街へレッツゴー」(朝凪


「そのテンションはなんなんだよ」(矢矧


「矢矧ツッコミ頑張ってるね」(時雨


「そう思うなら時雨お前もツッコミにまわってくれ」(矢矧


「それは遠慮しておく」(時雨


「なんでだよ」(矢矧



 そんなこんなで一体誰が原因なんだか知らないがずっと会話が止まることはなく、11時頃ついに山道を上り切った。




「おお〜〜!!たかーーい!!」


「如月お願いだから助手席でそんなに叫ばないでくれ・・・」


「だってこんな高いんだよ!?」


「気持ちはわかるけどさ・・・」


「ところで時雨はさっきからずっと矢矧にしがみついてるけど大丈夫?」


「「あそうなの?」大丈夫?」


「ダイジョブジャナイデス……タカイトコロコワイ」


「時雨を真ん中に置いといてよかったな。多分外の景色見たら絶景ではあるけどいろ

いろまずくなる」


「だね・・・あはは・・・」



 アイヴラツェーンは谷の街。さっきの山から景色を見下ろすより実際の高低差は低いが、壁に張り付くような道を走るというのに大丈夫だろうか。もちろん僕も安全運

転は心がけるが。



 ちなみに山脈からの絶景はなかなかのものだった。既に山脈の内側へ入っているので見れないが、低い高度の雲を突き抜けた高さの道からは、魔法の森とバルラト大平原を綺麗に見ることができた。



 ペルニジムも、ビレノートも、スライム狩りをした岩山も、装甲猪を倒した森も、遠くの巨大な蒸気都市も。



 本当に、『すごい』としか感想が出せなかった。



 これからどんな景色が見れるか、とても楽しみだ。

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